韓国の水稲品種「密陽23号」を育種母本に使って
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概要
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いつの時代でも品種改良における最大の目標は,収量性向上の飽くなき追求にある.このことは水稲の品種改良でもf列外ではない.1970年代以降,米の生産量が消費量を上まわり,280万haの水田の四分の一を減反せざるをえない現状ではあるが,将来,農地をさらに効率的に利用して穀物自給率を高めるために多収品種の育成は必要である.そこで,農林水産省では水田の高度利用の施策をとる一方,プロジェクト研究「超多収作物の開発と栽培技術の確立」を1981年から開始した.その具体的な目的は,将来の稲作を想定し,超多収品種の育成と栽培技術の開発によって米の収量水準を一段階も二段階も上げておくことであった.また,このプロジェクトでは,収量水準の向上に外国品種を積極的に利用することが意図された. 著者らはとくに韓国品種「密陽23号」の半矢要性(草丈の低い)草型と多収性に着目した.その理由は,密陽23号が1978年,79年と続けて韓国で最も広く栽培された水稲品種であり,韓国の『緑色革命』に寄与していたからである.密陽23号は旺盛な分けつ,直立して長く厚い葉,剛直な桿,籾が多くて長い穂などの特徴をもっていたので,これらの特性を日本品種に導入すれば収量性をさらに向上できると期待した.この品種を交配母本に用い,農業研究センターメ)ミ1983年に関東138号を育成して以来,1993年までに合わせて9系統を地域農業試験場で育成した(第1表).東北農業試験場でも1986年に奥羽326号を,ユ989年には奥羽335号を育成した. 密陽23号を利用するに当たり,この品種の多収性を栽培生理学の側面から解析した研究成果は多数報告されているが,育種で必要な形質遺伝の知見についてはこれまでほとんど公表されていない.著者らは奥羽326号の育成の傍ら,密陽23号を用いた雑種の形質変異を調べたので,上記プロジェクト研究が1989年に一応終了し,また,この品種を直接に利用した育種が一段落したとみられる現在,今後の参考としてここにその概要を紹介する.
- 日本育種学会の論文
- 1994-06-01
著者
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