陸稲農林儒4号のいもち病抵抗性の遺伝
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概要
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病虫害や冷害に対する抵抗性と多収性を追い続けてきた我が国の水稲育種は,1960年代後半に米の自給が達成されてからは,主な育種目標を安定・多収から良質・艮食味に転換した.その結果,食味が佳良な品種が多数育成され普及してきている.しかし,このような品種は多くの場合,食味佳良とともにいもち病に弱い性質も母本から受け継いでいる.いもち病は農薬により防除がかなり可能であるとはいえ,依然として稲作に多大な被害を与えうる最も重要な病気であることから,このような良食味指向に伴ういもち病に対する弱さは憂慮すべき育種上の問題となっている.いもち病抵抗性の遺伝に関する研究は1950年代から広範に実施され,多数の主働遺伝子が発見された.著者らも外国品種の抵抗性を日本品種に導入し,Pi-z^t,Pi-b,Pi-t遺伝子を見出した.しかし,これらの真性抵抗性遺伝子は病原性のいもち病菌の出現・蔓延によって効果を失い,それらを用いた品種の罹病化は避けられない事実であった.それに対し,1970年代からは圃場抵抗性といわれる微働遺伝子支配の抵抗性が育種事業で活発に利用されるようになったが,この種の抵抗性の遺伝研究は多くはなかった.そこで,著者らは,陸稲農林濡4号の抵抗性の強さに着目し,水稲品種コシヒカリとの雑種で抵抗性の遺伝分析を行うとともに,その抵抗性を水稲品種に導入するための効率的な育種法を検討してきた.しかし,ここで取り扱ったすべての雑種集団に共通する抵抗性の遺伝が統一的には説明できなかったため,これまで研究結果を公表する機会を逸していた.稲育種が上述のような現況にあることを踏まえ,圃場抵抗性を利用する育種の参考として,ここに陸稲農林嬬4号の抵抗性の遺伝に関する研究結果の概要を報告する.
- 日本育種学会の論文
- 1994-03-01