多波長マイクロ波放射計データの直接的データ同化とTOGA COARE領域でのメソ数値予報モデルへのインパクトについて

概要

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SSM/I (Special Sensor Microwave Imager)の輝度温度(TB)とrainflagデータを直接的にメソ数値予報モデルへデータ同化する手法を開発した。このため、本研究は鉛直1次元の変分法(ID-VAR)を採用した。本研究では、Liu(1998)の放射伝達モデルを用いて、数値予報モデルの物理量からTBを計算した。SSM/I TBの表現する物理量の違いを考慮して、TBの観測値と計算値の差は降水域では降水強度、非降水域では熱力学場の関数と近似した。また、rainflagと降水域でのTBの同化のため、NWPモデルの降水パラメタリゼーションスキムから導出した、降水域における、湿度と安定度の準平衡の仮定を利用した。一方、非降水域でのTBからtotal water contentを求め、Smith(1990)の手法で水蒸気と雲水に変換した。1D-VARを簡単化するため、渦度と質量変数のunbalance成分の第1推定値の予報誤差相関が無視できると仮定した。これを用いると、1D-VARはtotal water contentと発散についての最小値問題に分けることができる。これらの問題を解くのには、Newtonian iteration methodを使った。このデータ同化手法で求められる物理量を検証するため、TOGA-COARE期間中の1992年12月19-20日の事例を取り上げた。その結果: 1) 本研究のデータ同化手法で求めた可降水量はゾンデデータから計算した可降水量及びShibata(1994)でリトリーバルされた可降水量と良く対応する。2) 水蒸気のプロファイルと雲水量の物理的整合性がSmith(1990)の方法を用いることで得られた。但し、データ同化によって水蒸気のプロファイルの精度は向上していない。3) rainflagと降水域でのTBの同化が、Short et al. (1997)のTOGAレーダーで観測された降水域と〜100kmスケールで良く合うNWPモデル降水域を作った。また、このデータ同化の予報へのインパクトを調べるため1992年12月19日のTBデータを同化した予報実験を行った。この結果は: 1) ゾンデと比べて高い水平分解能を持つSSM/Iデータを同化することで、の予報が48時間程度の期間にわたって、改善されたことを示す。また、水蒸気場の改変は、水蒸気場の予報に加えて、大規模スケールの降水の予報も改善している。2) 本研究のrainflagと降水域のTBのデータ同化は、メソスケールの降水域のパターンの予報の改善と、スピンアップエラーの減少に寄与している。3) 本研究のデータ同化の水蒸気場の改変による大規模な降水域のパターンの変化と共に、亜熱帯の偏東風域と赤道の弱風域の境界も南下したことがわかった。
社団法人日本気象学会の論文
1999-06-25

多波長マイクロ波放射計データの直接的データ同化とTOGA COARE領域でのメソ数値予報モデルへのインパクトについて

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