新規抗悪性腫瘍薬S-1のマウスにおける免疫毒性作用 : S-1,UFTおよび5-FUとの比較試験
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概要
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S-1の免疫毒性作用を類薬のUFTおよび5-FUと比較検討した。投与量はsarcoma 180を用いたマウスの効力試験(9日間)のMTDを最高に公比1.5で除した用量を設定した。すなわち, S-1が3.9,5.9,8.8および13.2 mg/kg/day,UFTが11.0,16.5,24.7および37.0 mg/kg/day, 5-FUが17.8,26.7および40.0 mg/kg/dayを用いた。S-1および対照物質をBALB/cマウスに7日間経口投与した後,脾臓・胸腺重量,白血球・赤血球数,および骨髄細胞を用いたCFU-GMコロニー数の測定を行った。また,免疫機能への影響を感作抗原にヒツジ赤血球を用いたPFC反応およびfootpadの腫脹を指標にするDTH反応試験で調べた。UFTおよび5-FU投与動物で体重減少がみられたが,S-1では影響はなかった。胸腺・脾臓重量の有意な減少がみられ,S-1および対照物質の高用量の2用量のもとでは,その強さに差はみられなかった。白血球数の用量依存的な減少がみられたが,その減少の程度はS-1が他の対照物質と比較して弱かった。S-1および対照物質投与群とも赤血球数の減少がみられたが,用量相関は無く,その減少の程度に差はみられなかった。S-1により抗体産生の用量依存的な抑制,最高用量群で細胞性免疫反応の有意な抑制がみられたが,その程度は各S-1および対照物質の最高用量のもとでは差はみられなかった。S-1を含め3剤とも,体液性免疫より細胞性免疫に対する抑制作用が強かった。骨髄への影響としては,S-1および対照物質とも最高用量群でCFU-GMコロニー数の顕著な減少がみられた。さらにS-1ではより低用量でもコロニー数の減少がみられ,これはS-1の血中5-FU濃度の持続性が反映したものと考えられた。今回のマウスを用いた免疫毒性試験において,S-1の免疫毒性作用は質的にはUFT,5-FUと同じであり,強さにおいても各高用量群において大きな差はみられなかった。
- 日本トキシコロジー学会の論文
- 1996-11-27
著者
-
前田 泰宏
大鵬薬品工業株式会社製薬センター安全性研究所
-
大内田 昭信
大鵬薬品工業
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河内 泰英
大鵬薬品工業株式会社 製薬センター 安全性研究所
-
森永 秀信
大鵬薬品工業株式会社 製薬センター 安全研究所
-
森永 秀信
大鵬薬品工業株式会社製薬センター安全性研究所
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前田 泰宏
大鵬薬品工業(株) 製薬センター
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河内 泰英
大鵬薬品工業株式会社製薬センター安全性研究所
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