正逆交雑集団を用いたチャの母性遺伝RAPDの検出
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概要
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チャの正逆交雑に由来するF_1集団(54個体に由来する栄養系)から,種子親からのみ遺伝するRAPD(以下,母性遺伝RAPD)を検出した.1040のランダムプライマーから18,e-RAPD検出中に見出した1,計19の母性遺伝RAPDを得た.親子関係の明らかな品種・系統・種間雑種間において母性遺伝を確認するとともに,母性遺伝の安定性とマーカーとしての再現性を確認した.検出した母性遺伝RAPDのPCR産物はそれ以外のRAPD PCR産物と比較して分子量が大きい傾向が認められた.これは母性遺伝RAPDがミトコンドリアや葉緑体の1細胞あたりのコピー数の多いDNAが増幅した結果であろう.5の母性遺伝RAPDをクローン化し塩基配列を決定した.そのうち,1クローンがアラビドプシスのミトコンドリアゲノム上の配列と高いホモロジーがあったが,他の4クローンは既知の配列との高いホモロジーは認められなかった.一般的に高等植物の葉緑体ゲノムはミトコンドリアゲノムと比べて保守的であり,既にその全配列がいくつかの植物で決定されている.一方,ミトコンドリアゲノムは葉緑体ゲノムよりサイズが大きく,かつ多型性に富むことから,高いホモロジーが確認された以外の母性遺伝RAPDもミトコンドリアゲノム由来である可能性が高い.育種においては,細胞質の各形質への影響に留意しながら,耐病性等の観点から,細胞質の多様性を確保しておくことが望まれる.母性遺伝RAPDは検出が容易であり,育種において,細胞質の多様性確保のための有力な手段である.また,チャの種子は1g内外で高等植物の種子としては大きく,かつ有毒なサポニンを多量に含有するため動物による移動も考えにくい.従って,自然状態における細胞質の拡散は非常に限定される.このためチャの細胞質DNAは集団の起源を考察する上で染色体DNA以上に有用であり,検出が容易な母性遺伝RAPDの利用価値は大きい.
- 日本育種学会の論文
- 2002-12-01
著者
-
田中 淳一
野菜茶研・育種開発
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田中 淳一
野菜 ・ 茶業試験場(枕崎)
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田中 淳一
独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構野菜茶業研究所枕崎茶業研究拠点:(現)農林水産省技術会議事務局
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田中 淳一
農業技術研究機構野菜茶業研究所枕崎茶業研究拠点
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太田(目徳) さくら
農業技術研究機構野菜茶業研究所枕崎茶業研究拠点
-
太田 目徳
農業技術研究機構野莱茶業研究所枕崎茶業研究拠点
-
太田(目徳) さくら
農業技術研究機構野莱茶業研究所枕崎茶業研究拠点
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