品種を活かした茶業経営
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概要
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我が国には1999年現在, 全国で50, 784haの茶園がある.そのうち, 挿し木で繁殖した品種茶園は46, 331haで, 残りが実生で繁殖した在来種の茶園である.'やぶきた'の栽培面積は38, 738haで, 全栽培面積のうち76.3%, 品種茶園の面積のうち83.6%を占めている.最も栽培面積が多い静岡県では, 品種茶園の93.8%を'やぶきた'が占めている.'やぶきた'の栽培面積が急速に増えたのは, 1955年頃からである.それまでの手摘みに替わって機械摘採が普及し始めたが, 効率よく行うためには, 新芽の生育程度や大きさ, 特性が揃った品種茶園に切り替える必要があった.そのような状況の中で, 'やぶきた'は当時の品種の中では樹勢が強く, 多収で, 萌芽期が早く, 樹姿が直立性で機械摘採に向いていたため栽培面積が広がった.同時に, 製茶機械の大型化や自動化も進み, 'やぶきた'の普及は茶業の近代化や発展に大きく貢献した.しかし, 'やぶきた'一品種への過度の集中は, 病虫害の多発, 晩霜害の多発, 摘採期の労力不足や労働過重, それらを補うための製茶機械の過剰な大型化, 製茶工場での生葉の停滞による品質の低下などさまざまな弊害を招いている.特に, 茶は嗜好品であるため, 香味が画一化され, 消費の停滞につながる可能性がある.野菜・茶業試験場(前身の東海近畿農業試験場, 茶業試験場を含む)では, 数々の緑茶用品種を育成してきたが, なかなか生産者に導入されなかった.しかし, 近年, 経営規模の大型化, 減農薬栽培などに対応するため, 'やぶきた'だけでは対応できなくなり, 新品種を積極的に導入する生産者が増加している.本報告では, 今後の新品種育成や普及の資料とするために, 'やぶきた'以外の最近の育成品種を経営に取り入れている事例を集め, 生産者, 流通業者が新品種に何を求めているかについて明らかにした.
- 日本作物学会の論文
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