堆積性軟岩の風化に伴う物性変化(<特集>地形プロセスにおけるロックコントロール)
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概要
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福島県東部浜通り地域に分布する河成侵蝕段丘面下の基盤岩石を構成する堆積性軟岩を対象として,その風化に伴う岩石物性の変化,とくに基盤岩石の表面(段丘礫層の基底)から鉛直方向(深度方向)における変化傾向を調べた.この地域の侵食段丘を構成する基盤岩石は新第三系鮮新統仙台層群の細粒砂岩および泥岩であり,風化にともなう変色が特に明瞭で,変色帯と未変色部の境界(変色風化フロント)の特定は極めて容易である.また,当地域を東流し太平洋に注ぐ河川沿いに発達する河成侵食段丘のうち,中位段丘9地点,下位段丘5地点の合計14地点の段丘崖に露出する細粒砂岩(12地点)および泥岩(2地点)の風化断面を対象として,岩盤上部の強風化帯から未風化部まで連続的に力学的性質(針貫入硬度,山中式土壌硬度),物理学的性質(乾燥密度,自然含水比,間隙率),化学・鉱物学的性質(化学組成,鉱物組成),色調等の岩石物性を計測し,その変化傾向を考察した.力学的性質や物理学的性質の変化は変色部下方の未変色部で開始しており,その位置は肉眼および分光測色計による色測定によっても特定できなかった.そこで,黄褐色に変色している部分を「風化帯変色部(以下,DZと呼ぶ)」,強度が低下していても変色が肉眼で確認できない部分を「風化帯未変色部(以下,WNZと呼ぶ)」,そして岩盤強度がほぼ一定である部分を「未風化部」とし,それぞれのフロント部を「変色風化フロント」および「未変色風化フロント」とよぶことにした.蛍光X線分析法による化学組成の変化傾向は,(1)未変色風化フロントから徐々に減少(CaO,MgO,Na_2O,K_2O,SiO_2),(2)変色風化フロントから急激に増加(FeO+Fe_2O_3,MnO,P_2O_5)もしくは減少(S)および(3)変化なし(TiO_2,Al_2O_3),の3類型に大別された.また,DZにおいては黄鉄鉱(FeS_2)が消失していた.以上のような種々の岩石物性の変化を総合すると,本調査地域における堆積性軟岩の風化断面では岩石中に普遍的に含まれる黄鉄鉱の酸化によって生じる硫酸がDZの下方に浸透したことによって,未変色にもかかわらず強度の低下しているWNZが形成されたものと解釈した.また,DZとWNZの厚さを比較すると概ねその比(Z_<DZ>/Z_<WNZ>)が1以下であり,さらに細粒砂岩と泥岩のWNZの厚さを比較すると後者の方が前者よりも圧倒的に薄いことが判明した.このWNZの厚さの違いは主に両岩石の透水性の差によるものと考えた.さらに,露頭縦断形の傾斜変換点(遷緩点)が特に明瞭な風化断面では,その深度において強度をはじめとする諸物性値が変化しており,それらの物性値が岩盤斜面の縦断形を制約しているものと考えられた.また,周辺の同種の岩石で構成されている丘陵斜面ではWNZ付近をすべり面とした斜面崩壊が発生しており,斜面発達を考える上でもWNZの存在が重要であることを指摘した.
- 2002-03-25
著者
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