生存競争による主必従谷の限界谷口間隔
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概要
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断層線崖やケスタ斜面あるいは大規模な直線谷の谷壁斜面のような単純な地形場をもつ地区において,そこに発達する必従谷のうち,主分水界に谷頭をもつ主谷群を選び、それらの平均谷口間隔を地形図上で計測した.そのような地区では,主分水界と山麓線が,1)ほぼ直線的かつ平行に走り,2)ほぼ一定の比高をもち,3)両者間の距離にくらべて数倍〜数十倍の長さに伸長している地区であり,4)したがって両者間の接峰面の等高線はほぼ直線かつ平行である.計測地区は日本で32地域から61地区,台湾山脈東面斜面(4地区),ヒマラヤ山脈南面斜面(1地区),ヨーロッパアルプス(5地区),スウェーデン(1地区),アメリカ北西部(7地区)である.主谷の平均谷口間隔(S)は主谷の平均流域長(L)に比例し,S=αL^βで表される.ここに,αは定数である.βはほぼ1と看做されるから,上式はS=αLと書き換えられ,αは無次元となる.αは0.1〜1の値をとるが,1を超えることはない.また,建設後2年以内の切取法面や盛土法面におけるガリー群のαは0.1以下である.よって,αは必従谷の併合による生存競争の程度を表すと考えられるので,必従谷の併合示数(Integration index)とよぶことにした.併合示数(α)は谷の形状係数(F=A/L^2.ただし,Aは流域面積)と比例関係にあり,両者は良い相関を示す.しかし,Fが0.2〜0.6の範囲で変動するに過ぎないのに対し,αは0.2〜1の広い範囲で変動するので,必従谷の併合程度を示す指標としては,αがより有効であると考えた.αが1を超えないことは,単純な地形場において隣接する主必従谷の平均谷口間隔には限界値が存在し,流域長よりも大きな流域幅をもつ主必従谷は発達しないことを示唆する.なお、併合示数(α)は,地形場と時間のほかに,地質・気候条件にも制約される可能性があるが,その解明は今後の課題である.
- 2008-01-25
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