近現代教科書に記された「調理」を説明する語句について
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概要
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「調理」の意義を考察する目的で,明治期から現代までの高等女学校用家事教科書,割烹教科書,女子師範学校用家事教科書,および高等学校,短期大学,大学で用いられてきた調理関係の教科書を調査した。「調理」を説明する語句を採録し,分類整理して,次の様な結果を得た。1) 「調理」の目的や定義を説明する言葉には「食品を食物にする」,「食べ易くする」,「衛生的安全にする」,「栄養,消化をよくする」,「食欲を増す」,「おいしくする」,「外観をよくする」,「精神的な豊かさを与える」など47種の語句に分類された。2) 家事教科書では「食品」と「食物」の区別がはっきりしていなかったが,高校と特に大学では「調理」を「食品を食物にすること」と説明する教科書が多く見られた。3) 高校教科書では「食品をを食べ易くする」,「すぐ食べられる」,「食べられるものにする」という表現が多く見られた。4) 衛生面の語句としては家事教科書では「微生物,虫,卵などの殺滅」,「清潔を保つ」,「有毒物質の除去」など多くの言葉を用いていたが,高校,大学では大部分が「衛生的に安全にする」という表現でまとめていた。また大学の教科書では有毒物質として農薬を挙げているものがあった。5) 栄養,消化に関する語句はどの教科書にも多く出現していたが家事教科書では特に消化し易くすることが重視されていた。6) おいしさに関する語句は家事教科書では「味を美にし」,「滋味を増し」,「香味を添え」など著者により様々な言葉で表現していたがそれらは高校の教科書では「おいしくする」の一語に集約されていた。7) 大正期までの家事教科書と1970年代後半以降の大学の教科書には,「調理」を心の精神面での充実を与えるものとしているものが見られた。また,最近の大学の教科書では「伝承すべき文化である」といった表現,技術開発による食品への注意など調理への新しい視点が示された。
- 日本調理科学会の論文
- 2000-11-20
著者
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