意思決定理論における心理学的なアプローチ
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概要
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本論文は、規範的な意思決定モデルを代表する期待効用理論に対する心理学的な問題点を指摘し、記述的な意思決定モデルとしてカーネマンとタベスキィー(Kahneman & Tversky, 1979)が提示した「見込み理論(prospect theory)」の紹介とその意義について論じている。2つの理論は排他的な関係にあるものではなく、相補的な関係にある。ここで問われていることは意思決定における人々の思考作業の合理性である。規範モデルが批判する"非合理な(irrational)"な私達の意思決定は、状況に応じた価値体系の構成や不確かさに対する心理学的な態度特性を示し、それ自体の目的性を示している。私達の価値体系は決して固定的なものではなく、可変的である。心理学によれば、私達の決定は未完結で開かれた決定であることが多く、公理系によって限定された領域で求められている合理性から逸脱しやすいと考えられる。心理学が問題にする意思決定理論は人間の特性に基づいた理論であり、合理性を前提としている規範的モデルと異なる。選好の逆転やリスクに対する態度変容、決定における信念の主観的な重みづけなどは規範的なモデルの主張する合理性から逸脱しているが、その合目的性は否定できない。意思決定における心理学的なアプローチは規範的なモデルに対する合理性の再検討と私達の決定を導いている思考作業の解明を求めているのである。
著者
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