道徳的な意思決定における思考作業に関する心理学的研究
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概要
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倫理学で論じられている人間の道徳問題に関し心理学はいかなる貢献をなしうるのか。本研究では、人々の道徳的な意思決定に関わる思考過程に注目し、心理学的な立場から分析を試みている。まず、道徳哲学に対する心理学の立場を明らかにするために、Kohlbergの道徳心理学の位置づけと、この領域におけるゲーム理論の導入意義について検討し、道徳的な意思決定が相互に影響を及ぼし合う思考作業"interactive thinking"として追究される重要性を説いている。次に、この重要性を明らかにするために、大学生を対象に2つの条件の下で行われた道徳的な意思決定、すなわち、<架空の意思決定>と<現実の意思決定>を通して、それらの質的な相違を検討した。その結果、道徳的な意思決定とは、対人的な関係の中で現実的な価値を持たされた決定であり、その決定の合理性は論理的思考の合理性ではなく、現実的な価値の達成の程度にあること、さらに、道徳的な思考作業には事態の変化に対応した柔軟さが求められていること、などが明らかにされた。
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