公正さに関する認知的特性の検討
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概要
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本研究は、人間社会を成立させている基本的な要因の一つである公正さ(fairness)に着目し、公正さに対する認知的な特性を明らかにすることを目的としている。本編では、まず、これまでに論じられてきた公正さに関する道徳的な思考(moral thinking)をその倫理性と功利性から検討し、次に、具体的な金銭の分配と受諾の場面を設定し、公正さに関する5つのゲーム(調査)を大学生に実施し、その内容の分析を試みている。公正さに関する道徳論的な説明は、理想的な社会や人間像から導かれるもので、個人の"自由意思"における権利と義務が公正さの内容規定となっている。他方、功利主義的な考察は、公正さを"最大多数の最大幸福"をもたらす最善の戦略と捉え、利害関係における公平さ(equity)と正当性(justice)に基づいた合理的な戦略が公正さの内容を規定している。ゲームの調査結果を見る限り、人々の意思決定における公平さは必ずしも功利主義的ではない。公正さの内容規定に及ぼす認知的な特性は、具体的な場面の相違や文化的相違、男女学生間の性差などを反映して多様であり、公正さに関する一般な説明理論を見い出すことは困難である。しかしこのことは、何が公正かを説くことが重要なのではなく、現実的な人間関係を豊かにするには何ができるかを考えることがより重要であることを示している。
- 摂南大学の論文
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