模擬社会ゲームとその教育的意義
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概要
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本稿は,模擬社会ゲームのもつ教育的意義について考察している。一般に,ゲームにはゲームを性格づける固有のルールが存在するが,模擬社会ゲームには,4つの地域に分けられたそれぞれの地域と地域間に与えられた社会的な初期条件や物理的制約があるにすぎず,ゲームを特色づける社会的行動は,参加者の主体性と彼らの社会的資質に委ねられ,参加者達が理解し,合意した事項が彼らの社会的行動のルールとなってゆく。従って,ゲームに関するルールや知識は与えられるものではなく,自らが発見せねばならない。このような社会に関する知識は,参加者の社会への関わりとして具体的な行動に現れるために主観的にならざるをえない。だが,その主体性と関わることによって社会を客観的に捉えることも可能となり,社会に関する知識も生きたものとなろう。参加者は自分たちの社会の推移を反省し,相互理解を深めながら,社会と人々の関係を確認する。特に,現実的状況のなかで自らの主観の下に社会を捉えることで,社会に関する理論と実践の相違,現実と理想の相違を発見し,自らの意識変革を遂げてゆくことが期待される。このことこそこのゲームに課せられた教育的意義であり,これまでの教育と異なるところである。そして,このゲームが人間の主体性と社会の関係を明らかにしてゆくかぎり,その教育的価値は大きいし,また,社会科学における科学的理解とは何かについても多くの示唆を与えつづけるであろう。
- 摂南大学の論文
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