"Ultimatum game"における戦略決定の合理性と公正さの認識について
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概要
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本論文は、"Ultimatum game"(最後通牒ゲーム)"を3つの条件下で実施し、人々の戦略決定が必ずしも功利主義的な合理性に基づくものではなく、多様な心理的要因に左右されていることを実証し、その心理学的な考察を行っている。特に、戦略決定におけるゲーム理論的な合理性と人々の公正さに対する認識との関係について論じている。 最初の予備実験(思考実験)では、被験者に対て、申し出人(Proposer)の立場から分配金額の決定と申し受け人(Responder)の立場から受諾のための最低金額の提示を求めた。実験1では、分配権利の正当性を保証する手続きと分配が成立しやすいようにインセンティブ条件が用意された。実験2では、実験1の条件に加えて、利害関係にある両者が互いに識別できる条件と申し受け人の希望金額を聞いた上で申し出人が最終の分配金額を決定するという交渉的な手続きが用意されている。 以上の3つの実験から、被験者はいずれにおいてもゲーム理論的な戦略決定を選択していなかったこと、また、公正さの認識においても、申し出人と申し受け人では大きな違いがあること、などが明確にされた。戦略決定における公正性はゲーム理論などを中心に規範学的な視点から追求されてきたが、他社の"心の存在"を認めた心理学的な視点からも追求される必要がある。特に、戦略決定における状況要因と人格的要因は見逃せない。さらに、Ultimatum gameは、プレヤーたちが心理的な駆け引き(bargaining)を通して互いに合意を形成するまでの多様な心理的要因をモデル化するために、極めて有効なゲームであることが明らかにされた。
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