意思決定における思考作業の実験的検証
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概要
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本研究は他者の存在や他者の意向が人々の意思決定に与える影響をゲームを用いて実験的に検証することを目的としている。特に、意思決定における人々の思考作業には、これまでのPDゲーム(Prisoner's Dilemma game)やWasonら(Wason & Johnson-Laird, 1972)の「4枚カード」実験から2つの質的に異なる思考作業が含まれていることが明らかにされてきた。つまり、ゲームの課題に即した合理的で論理的な思考作業と対人関係に重きを置いた心理的で道徳的な思考作業の2つである。本編では、人々の意思決定における2つの思考作業の特質を明らかにし、相互の関係を検証するために、「情報操作」という手法を導入したゲームを実施した。すなわち、自分の戦略を宣言するという手法の導入である。戦略の宣言は情報の信用性という観点から人物評価に関わる思考とその情報にもとづく論理的な戦略の推論という2つの作業を要請する。しかし、人々は宣言された戦略から論理的な戦略を導くことより対戦相手の性格や心理に強い関心を示していることが明らかにされた。他者の意向や他者の作戦は主観的なものとされ、そこから客観的で合理的な戦略を推理することは有効ではないと認識する傾向がある。そして、論理的な戦略思考より心理的な思考が優先されるために、各戦略間を論理的に関係づける思考作業が困難になっていると考えられる。また、心理的な思考は主観的な気分にも左右されており、他者志向的な思考作業が必ずしも道徳的な思考作業を明示するものではない。意思決定における道徳的思考の位置づけにはさらなる検証が必要である。
著者
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