官能基を持つ有機化合物の位置選択的重水素化
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概要
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特定の位置に重水素を導入した化合物は反応の追跡や生体高分子の構造解析のプローブとして,またそれ自身が生理活性物質として注目されつつある。しかし,位置および立体選択的な重水素化の手法はいまだに確立されていない。重水素源としては重水素,金属重水素化物,重水等があるが安価な重水を用いる重水素化反応は,酸やアルカリ触媒の存在する過激な条件下で行われる事が多く反応活性な化合物に適用することはできない。本研究では官能基を持つ有機化合物の重水を用いた中性条件下での重水素化反応を検討したところオートクレーブ中170℃でアルデヒド,ケトン,α-アミノ酸のα位が重水素化されることが明かとなった。ニトリルやカルボン酸が重水素化されないこと,α,β-不飽和アルデヒドではγ位が重水素化されることからケト-エノール互変異性を経てH-D交換が起こっていることが予想された。また得られた重水素標識化合物の応用例として,生体高分子の構造解析に寄与する重水素標識アミノ酸の合成を行った。即ち,α位に重水素を導入したイソブチルアルデヒドを原料としてErlenmeyer法に従いデヒドロアミノ酸を調製した後,重水素添加することによりロイシンー2,3,4-d_3を合成した。得られたロイシンの核磁気共鳴スペクトルは重水素標識によって著しく単純化され蛋白質の構造解析に充分応用可能と考えられる。
- 東海大学の論文
- 1994-03-30
著者
-
甲斐荘 正恒
Department of Chemistry, Tokyo Metropolitan University
-
大場 真
東海大学開発工学部素材工学科
-
西山 幸三郎
東海大学開発工学部素材工学科
-
甲斐荘 正恒
Department Of Chemistry Faculty Of Science Tokyo Metropolitan University
-
大場 真
Department of Material Science and Technology, School of High-Technology for Human Welfare, Tokai Un
-
西山 幸三郎
Department of Material Science and Technology, School of High-Technology for Human Welfare, Tokai Un
-
河原 葉子
Department of Material Science and Technology, School of High-Technology for Human Welfare, Tokai Un
-
橘川 守
Department of Chemistry, Faculty of Science, Tokyo Metropolitan University
-
橘川 守
Department Of Chemistry Faculty Of Science Tokyo Metropolitan University
-
河原 葉子
Department Of Material Science And Technology School Of High-technology For Human Welfare Tokai Univ
-
西山 幸三郎
Department Of Material Science & Technology School Of High-technology For Human Welfare Tokai Un
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