シリルイソシアナート,イソチオシアナートの反応性
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概要
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近年,有機ケイ素化合物は有機合成に広く用いられ,合成試薬としての有用性が認められてきている。官能基としてイソシアナートやイソチオシアナートを持つ有機ケイ素化合物は古くから知られていたがその反応性に関する報告は極めて少ない。今回,我々はヘテロクムレンユニットを含む有機ケイ素試薬の反応性の研究の一環としてイソシアナト基,及びイソチオシアナト基を持つ有機ケイ素化合物に着目し有機金属化合物,及びα,β-不飽和カルボニル化合物との反応を検討した。一般にイソシアナートやイソチオシアナートは有機金属化合物と反応して相当するアミドやチオアミドを与えることが知られているが,ケイ素原子を含むこれら化合物の反応に関する報告は極めて少ない。本研究では4種のこれらの化合物と有機リチウム試薬やGrignard試薬との反応を試みたところトリメチルシリルイソチオシアナート(TMS-NCS)以外の化合物ではクムレン炭素上で反応が起こり相当するアミドやチオアミドを与えた。一方,TMS-NCSの反応ではケイ素上での反応が優先的になり,カルバニオンがシリル化されたテトラアルキルシランを与えることが明らかになった。これらの事はTMS-NCSのクムレン炭素の求電子性が極めて低い事を示しており,酸素と硫黄の電気陰性度の差やケイ素の電子供与性に由来していることが予想された。一方,α,β-不飽和カルボニル化合物との反応ではTMS-NCSのみが反応してβ位にイソチオシアナト基を導入したカルボニル化合物を与える事が明らかとなったが,種々の検討の結果,系中の水が反応を促進することが明らかとなりTMS-NCSの加水分解生成物であるHSCNの反応であることが示唆された。
- 1993-03-30
著者
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大場 真
東海大学開発工学部素材工学科
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西山 幸三郎
東海大学開発工学部素材工学科
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大場 真
Department of Material Science and Technology, School of High-Technology for Human Welfare, Tokai Un
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西山 幸三郎
Department of Material Science and Technology, School of High-Technology for Human Welfare, Tokai Un
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蔡 美穂
Department of Chemistry, Tokyo Metropolitan University
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西山 幸三郎
Department Of Material Science & Technology School Of High-technology For Human Welfare Tokai Un
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蔡 美穂
Department Of Chemistry Tokyo Metropolitan University
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