尾崎紅葉の言文一致文 : 「多情多恨」を中心に
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概要
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尾崎紅葉の言文一致文体の特徴について、文末表現、用字・用語、修辞技法の点から調査・分析し、紅葉の目指した言文一致文のあり方について考察した。分析の対象とした主な作品は、「である」体の完成作と言われる「多情多恨」であるが、それに先立つ言文一致文の「紫」「青葡萄」も参考にし、同時期の雅俗折衷文体の「三人妻」「心の閣」と適宜比較した。紅葉は言文一致文を会話の言葉とは劃然と区別し、会話の言葉をもとにした書き言葉としての文体を作ろうとしたことが窺われる。そこに言文一致文に失われがちな「美文」としての要素を織り込んでいったと考えられるのだが、その一つが例えば俗語であるオノマトペの漢語表記など用字・用語の工夫であり、また修辞技法においては、反復・尻取り文など雅俗折衷文とは異なる修辞の多用であったと思われるThis paper attempts to discuss how Ozaki Koyo made his unique style in the unification of spoken and written language. For this purpose, "Tajo takon" and four additional stories were studied in the following three respects.: 1) the expression of the end of sentences, 2) letters and words, 3) rhetoric. Koyo made the colloquial written style based on the spoken language, but it was distinguished from the spoken one. To make this colloquial written style into the figurative style, he added some elements, for example, putting Chinese characters as substituted characters to onomatopoeia, a kind of slung, and using some rhetorics which were not used in his literary style.
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