日韓中学生の競争意識と選抜システム
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概要
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日本と韓国の中学生の競争意識について以下の六点が見出された。第一に,競争意識を抱く者は両国とも少数派であり,中学生たちの意識は必ずしも「受験=競争」という図式でとらえることはできない。また,第二に,家族ぐるみの受験競争というイメージは,日本よりもむしろ韓国に対してあてはまる。しかし第三に,両国とも競争意識を抱く者が存在しないわけではなく,その割合や分布は,選抜システムの特徴によって規定されている。また第四に,競争の状態を不安感や内申書への気遣いといった意識面と,学習時間という行為面からとらえた場合,やはりそのありようは両国とも選抜システムの特徴と対応している。さらに第五に,東京都の競争の状態については,「ユニバーサル選抜型」推薦入試の導入という選抜システム的要因を加えると,より説明力が高まる。これらのことから第六に,受験競争のありようは選抜システムによって規定されている「受験競争の社会的構成」が確認された。これらの知見は,選抜システムの改革や評価は,理想的なモデルをもとにするのではなく,システムがどのような生徒にどのような影響を与えているのかという現実的な調査にもとづいて行う必要性を示唆するものである。In this paper, I investigate the competitive consciousness of middle school students, based on the questionnarie survay data collected in Japan and Korea. The analysis shows that the entrance examination system can be devided into three factors: the stuructre of school hierarchy, a choice of schools, and the way of selection, and that each factors .influence the students' competitive consciousness in both countries. The result suggests that the entrance examination system should be reformed not in line with an idealistic model, but in consideration of the relationship between the system and the individuals.
著者
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