<原著>Ni-Cr合金の濃硝酸処理による接着性向上のESCAによる解析

概要

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Ni-Cr合金を濃硝酸で処理すると研磨したままの場合よりも接着性レジン(4-META/MMA-TBB)に対する接着性が著しく向上する。その理由を解明するために硝酸処理と研磨したままの合金表面をX線光電子分光分析装置(ESCA)で分析し, 両者の表面構造を解析した。研磨したままでの合金表面におけるNiとCrの濃度は, Ni 21at%, Cr 17%であるが, 硝酸処理を施すとNi 13%, Cr 25%になった。硝酸処理によって合金表面で, 4-META レジンに対する親和性の劣るNiが減少し, 親和性の優れたCrが増加した。また, O 1sスペクトルを解析すると, 次の3つの酸素に由来する成分に分解された。成分Iは不動態被膜のCr-O-Crに由来する酸素, IIは不動態被膜中のCr-OH・・・H_2Oに由来する酸素, IIIは被膜上に存在する吸着水に由来する酸素である。これらの成分の存在比は, 研磨したままでは, II>I>IIIの順であるが, 硝酸処理では, 1>II>IIIになった。これらは, 硝酸処理によって, 4 -META レジンに対する接着性が優れている不動態被膜が強固に形成していることを示す。
北海道医療大学の論文
1987-12-30