沖縄におけるサトウキビのカンガイ用水量決定に関係ある 2,3 の要素に関する研究(農業工学科)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1サトウキビの蒸発散量 1966年∿1971年に測定した夏植サトウキビの累積蒸発散量記録に基づき, 蒸発散量の時期的変化をモデル化した。また, その結果得られた夏植サトウキビの月別平均日蒸発散量と気象要因との関係を解析した。さらに, これらの関係に基づき, 気象要因によって推定した月別平均日蒸発散量と累積蒸発散量曲線から求めた月別平均日蒸発散量とを比較検討した。以下にその結果を示す。なお, 供試品種としてはN : Co, 310を採用し, 蒸発散量を琉球大学農学部附属農場でライシメータによって測定した。1)第II章第2節で述べたように, 沖縄における夏植サトウキビの累積蒸発散量は次式で示されるような二次のロジステック曲線に適合することが明らかとなった。Y=C+(D-C)/(1+e^<Φ(t)>)......(2・5)ここでΦ(t)=a_0+a_1t+a_2t^2 Y : 累積蒸発散量(cm) t : 30日を期間単位とした植付け後の期間数 C : 初期値 D : 漸近値 C, D, a_0,a_1,a_2は定数 である。2)(2・5)式を微分することによって平均日蒸発散量曲線を求めることができる。本研究結果によると, 沖縄における夏植サトウキビの月別平均日蒸発散量は一般に植付け翌年の7月∿9月にピークを示し, その前後においては次第に減少し, ある一定の値に漸近する曲線で表わされる。つまり, 沖縄では夏植サトウキビの月別平均日蒸発散量はその生育最盛期(7月∿9月)に約5∿6mm/dayとなり, 少ない時には1mm/day程度まで減少する。3)第II章第3節では, 沖縄における夏植サトウキビの月別平均日蒸発散量と月平均気温, 日最高気温の月平均値, 日最低気温の月平均値, 月別平均日射量および月別平均蒸発計蒸発量との関係を究明した。その結果, 夏植サトウキビの月別平均日蒸発散量とこれらの気象要因との関係も(2・8)式で示すようなベキ曲線で表わされることが明らかとなった。<ET>^^^-=ax^n......(2・8)ここで<ET>^^^- : 月別平均日蒸発散量(mm/day) x : 各気象要因(気温℃, 日射量Cal/(cm)^2・day, 蒸発計蒸発量mm/day) a, n : 定数 である。なお, 月別平均日蒸発散量とこれに対応する気象要因を(2・8)式に適用して得られた各関係式をその両辺の対数をとることによって直線化しその相関係数を検討した。その結果, 月別平均日蒸発散量と気温との関係では0.92日射量および蒸発計蒸発量との関係ではそれぞれ0.75,0.67の相関係数が99%の信頼度で得られた。4)3)の各関係式を用いて1967年度, 1968年度, および1970年度の月別平均日蒸発散量を推定した結果, 気温による推定値はほぼ一致した。この気温からの推定値は, 累積蒸発散量曲線から求めた月別平均日蒸発散量曲線に近似した曲線で示される。しかしながら, 月別平均日射量および月別平均蒸発計蒸発量からの推定値はばらつきが大きい。これは3)の各関係式の相関係数からも推察されることである。したがって, 本研究で検討した気象要因から夏植サトウキビの月別平均日蒸発散量を推定する場合は, 気温による方法を採用した方がよいと考える。2サトウキビに対する一回のカン水量 沖縄の石灰岩土壌地帯のホ場におけるサトウキビに対する一回のカン水量の諸元について究明した。すなわち, 同地帯のホ場におけるサトウキビの有効根群域, カンガイの上限値, 下限値およびサトウキビの土壌水分消費型について試験研究を行った。その結果と既応の研究結果に基づき, 石灰岩土壌地帯と泥灰岩土壌地帯におけるサトウキビに対する一回のカン水量についても比較検討した。1)サトウキビの有効根群域 サトウキビの根の風乾重量および長さの累計百分率は, 地表面からの深さに対し, ほぼ同一曲線を描く。この曲線によると, 沖縄の石灰岩土壌地帯のホ場におけるサトウキビの有効根群域は, 根の累計百分率が約95%になる深さに当り, およそ40cm∿50cmであることが明らかとなった(第III章第2節)。第I章第3節で述べたように, この土壌は極めて多孔質な石灰岩を基岩とし, 一般に土層が浅く, 場所によっては基岩が地表に露頭している。また土層が深い所でも, 地表より約30cm∿40cmの作土層と心土層がはっきり区別され, サトウキビの根はほとんど作土層内に分布している。実際のカンガイ計画に際しては, 石灰岩土壌地帯のホ場におけるサトウキビの有効根群域として, 約40cmを採用した方がよいと考える。久貝によると泥灰岩土壌地帯におけるサトウキビの有効根群域はほぼ50cmである。この土壌は一般に土層が深く, きわめて不透水性の泥灰岩を基岩としている。第IV章第1節によると, 石灰岩土壌地帯におけるサトウキビは干バツ被害を受けやすい。これはサトウキビの有効根群域および土層構造の違いにも起因していると考えられる。2)カンガイの上限値 カンガイ計画に際し, カンガイの上限値として, ホ場容水量を調査する必要がある。
- 琉球大学の論文
- 1983-11-19
著者
関連論文
- 浸入能試験に関する一考察 (II) (生産環境学科)
- 沖縄におけるサトウキビの蒸発散量 : 第 6 報 サトウキビの作物係数について(農業工学科)
- 沖縄の畑地帯における降雨の浸入および流出特性
- サトウキビに対するかんがい時期について(農業工学科)
- 降雨インテーク・レートの 2・3 の特性について : 第 3 報クチャ客土による島尻マージ土壌の浸透能低下について(農業工学科)
- 沖縄におけるサトウキビのカンガイ用水量決定に関係ある 2,3 の要素に関する研究(農業工学科)
- 沖縄におけるサトウキビに対するカンガイの必要性 (2)(農業工学科)
- 降雨インテーク・レートの 2・3 の特性について (2) : 降雨による緊密層形成に伴う浸透速度の低下について(農業工学科)
- サトウキビのタン水被害および湿害について(農業工学科)
- サトウキビのカンガイにおける有効土壌水分の下限値について (3) (農業工学科)
- 沖縄におけるタバコの蒸発散量について(農業工学科)
- サトウキビのカンガイにおける有効土壌水分の下限値について (2)(農業工学科)
- サトウキビのカンガイにおける有効土壌水分の下限値について (1)(農業工学科)
- サトウキビの蒸散量(農業工学科)
- 沖縄におけるサトウキビの蒸発散量 第 5 報(農業工学科)
- サトウキビのシオレ点について(農業工学科)
- 石灰岩土壤の圃場容水量 第 1 報(農業工学科)
- 沖縄におけるサトウキビの蒸発散量 第 4 報(農業工学科)
- 沖縄におけるサトウキビの蒸発散量 第 3 報(農業工学科)
- 沖縄におけるサトウキビに対するかんがいの必要性(農業工学科)