沖縄における土地利用の地域別分析 : (第 1 報)沖縄本島及び周辺離島における土地利用
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概要
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沖縄の農業は1985年以降, 農家数が減少傾向にあるなかで, 耕地面積は92年までは増加の傾向にあり, 農家1戸当たり耕地面積は拡大している。地域別に見ると, 沖縄本島地域及び周辺離島地域で伸びが大きいが, もともと零細規模の地域であったために, 結果として経営耕地規模の拡大が生産力・技術的に質的な変革を生じるまでの契機となっていない。特に, 沖縄本島地域についていえば土地改良が遅れているため, 未整備の耕地条件における規模拡大となる。したがって, 機械化をはじめとする技術革新においても零細分散的条件に対応した小規模集約的農業となって, 耕地規模の拡大に伴う農業技術のスケーメルリットを発揮しうる条件を欠落している。個別経営レベルの事例では比較的規模の大きい施設型の集約的経営をみることはできる。しかし, 土地利用型の自由市場商品作物の生産おいては大規模流通, あるいは計画的流通に対応した規模の大きい経営を地域的に集積された状況をみることはできない。したがって, これらの地域において, 高度な集約的土地利用型農業を展開するためには, 単なる量的流動化や土地条件の整備ではなく, 高度集約的利用を前提とした質的条件の改善が必要となっている。粗生産額の推移も, 地域間で異なる動きがみられる。すなわち, 本島北部地域は, 1985年から94年にかけてサトウキビの粗生産額が56.7%減少しているにもかかわらず総粗生産額はほぼ85年と同じ水準を維持している。したがって, サトウキビに代わる作目が出現したものといえよう。これに対し, 沖縄本島中南部地域は, サトウキビが57.7%減少し, 総粗生産額も21.4%減少していることからサトウキビの後退に代わる作目が出現しなかったことを示している。沖縄本島周辺離島では, サトウキビが36.4%減少しているにもかかわらず総粗生産額は9%伸びていることから, それに代わる作目の出現があったものとみられる。耕地の利用状況から農業の変化をみると, 耕地利用率は沖縄本島地域で大きく低下し, 特に, 中南部地域では耕地面積の大幅な減少を伴う厳しいものとなっている。北部地域では, サトウキビが減少しているが野菜や花きは増加している。中南部地域では野菜も減少している。沖縄本島地域のサトウキビの作付面積の減少は, 大幅でその速度が早い。この地域においてサトウキビが急速に減少したのは, 零細な規模と兼業とが結合した経営形態が多く存在したことと, 零細で分散した土地条件に適合した経済性のある技術体系と分業化の体制の確立が後れたことにある。このような状況に対応してサトウキビ単作からサトウキビ+アルファの複合化による土地利用の高度化の方向が求められる。このような土地利用の高度化を実現するためには, 地域独自の自然環境(風土・離島性)に規定されるところの技術体系(耕地体系・機械化体系)と作付方式が, 労働組織の再編と土地利用調整等と一体となった変革により, 地域独自の土地利用方式, さらには経営方式(生産組織)として確立される必要がある。このような土地利用方式が変革されるためには, さらに, 流通条件を含む地域の社会的条件の改善整備も必要である。したがって, 地域の諸条件に対応した, 各々の地域に独自の土地利用方式(システム)を如何に確立するのかが課題である。
- 1997-12-01
著者
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