沖縄における経済発展と傳統的農業の変貌(農学科)
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概要
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戦後の沖縄における高い経済成長と急速な都市化による"農業離れ"の現象は著しいものがある。農業部門からの労働力人口の流出や兼業農家の増加は, 農業者が自分の所得と生活を農業外の勤労者なみにしようとする強い動機にもとづいている。つまり, 農家は自分の経営規模を拡大するか, あるいは労働力を兼業へふり向けることによって, 所得や生活の格差を縮小しようとするからである。しかし, 他方ではさとうきびやパインアップル生産にみられるように, 価格支持や流通安定のための何らかの政策によっても強く左右されている。その結果, 農村では過疎化が進み, 農業経営は傳統的な複合経営から単作経営へと, 1960年前後を転期にして, その内容を大きく変えた。それは, 自給的な食糧作物の生産から換金のための原料作物への交替でもあるが, 同時に生産組織と技術体系を大きく変えたために, 農家の土地, 労働力, 資本財の利用などのひずみと生産力の不安定をもたらした。これは, 農家の所得や生活水準の向上のかげで忘れられてはならないことである。現在の農業経営は, 農家の土地と労働力を充分に活用できる経済条件をもっていないこと, 農業をとりまく自然の生態系ばかりでなく調和のとれた技術体系が崩れてきていることなどの問題に直面している。農業生産の長期的, 安定的な持続をはかるためには, 基幹作物を中心に必要なローテイションクロップや畜産との結合による複合経営を確立することは基本的に正しいことである。しかし, 現在の農業における技術体系とそれをとりまく経済的条件のもとでは, 農業経営から都市労働者なみの所得をうることは困難である。それでも長期的には, 地域の風土に根ざした複合的な家族経営の経済性が確保され, 土地と家族労働力が合理的に活用されるような, 経済的, 技術的な条件をつくりだすことが基本的に重要である。
- 琉球大学の論文
- 1983-11-19
著者
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