<原著>東南アジアにおけるHIV/AIDSの流行予測と保健対策の検討
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概要
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東南アジアにおけるHIV/AIDS患者数は増加の一途を辿っている。しかし, 様々な研究報告において, 報告数は一致しておらず, また東南アジア各国および全体の関係を取り扱った研究報告は少ない。そこで, U.S.Bureau of the Census(以下連邦社会調査局)による累積AIDS患者数を用い, 数理的手法(back-calculation model)により, 東南アジアにおけるHIV感染者数・AIDS患者数の将来予測をおこなった。その際, 7通りの分布を想定し感受性分析を行い, またHIV/AIDS捕捉率を算定し, サーベイランスの精度や必要な保健対策について検討した。結果は次の通りである。1)今後も東南アジア各国のHIV/AIDS有病者の増加が予測された。2)増加率が最も高い国はカンボジアで, 最も低い国はフィリピンであった。3)AIDS患者増加率は, 潜伏期間の分布や変動係数によらず一定であった。4)AIDS患者推測値とAIDS捕捉率は, 潜伏期間の分布や変動係数によらず一定である。HIV感染者推測値とHIV捕捉率は, 潜伏期間の分布や変動係数の影響を受け, 潜伏期間が長く, また変動係数が小さいと仮定した方が高い。5)シンガポールは, HIV/AIDS患者の把握が比較的よく, 潜伏期間は5〜10年に分布すると推定された。6)AIDS患者の把握が最も十分でなかった国はミャンマー, インドネシアである。AIDS捕捉率の方が高い国はインドネシア, フィリピンで, その他の国はHIV捕捉率の方が高い。潜伏期間の分布からもデータの不備が推測された。7)捕捉率など精度は十分といえず, 信頼できるサーベイランスの強化がのぞまれる。このような分析は, 状況をより正確に認識し, 対策の実施や予防活動の評価する上においても有効である。また, 緊急および長期的両側面からの国際援助の必要性を訴えたい。
- 広島大学の論文
- 2000-10-28
著者
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梯 正之
広島大学大学院 保健学研究科
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梯 正之
広島大学医学部
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梯 正之
広島大学 医学部 保健学科
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梯 正之
八街少年院
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洲濱 扶弥
広島大学大学院医学系研究科保健学
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梯 正之
広島大学大学院保健学研究科
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梯 正之
広島大学
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