<報告>ドイツにおける老人介護士養成教育の動向と課題
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概要
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本小稿の目的は,ドイツの老人介護士養成の成立背景と教育カリキュラムについて検討することにある。世界の先進諸国のなかで,老人介護の専門的資格制度を確立している国は,日本とドイツだけである。ドイツでは,わが国よりも約30年前の1960年代から老人介護の専門家の養成が行なわれてきた。しかし,当時,最初に,老人介護の養成の対象になったのは,子育ての経験のある主婦層であり,わずかばかりの医学と介護の知識が,彼女達に伝えられるだけであった。しかも,養成期間は非常に短かく,その結果,即座に十分な老人介護ができないことが分かった。現在では,多くの養成施設で3年間となり,老人介護士の十分な養成教育が行なわれるようになってきた。しかし,老人福祉施設の経営的理由などにより,老人介護士が採用されない状況にある。ドイツの老人介護士養成教育では,医学的関係科目が多く,医学的知識が重視されている。その結果,逆に社会福祉関係科目が非常に少なくなっていることが一つの特徴である。またドイツでは,老人福祉施設の老人介護が,キリスト教会の修道女によって行なわれてきたという伝統があるため,老人介護士養成教育のカリキュラムにも宗教という科目が含まれている。ドイツの老人介護士養成教育の課題は,老人介護士の就職先の確保にある。すなわち,老人介護士の養成教育期間が多くの養成施設で看護婦(士)と同様の3年間となり,十分な養成が行なわれるようになってきたとしても,老人介護士の就職先が確保されなければ,ドイツの老人介護の施策が前進することはないと考えられる。
- 山口県立大学の論文
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