小笠原産の肉座菌目 (1)

概要

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小笠原諸島の菌類地理学的資料は, 現在まだまだ不十分である。熱帯系の菌類の分布状態や小笠原諸島固有の菌類の存在を明確にするためには, さらに今後の研究資料の集積をまたねばならない。本報告では, 小笠原諸島の父島および母島で1976年秋に採集した菌類のうち, 主として熱帯・亜熱帯に分布すると考えられるネクトリア科の3種を同定記載した。これら3種のうち2種は日本新産で他の1種は新種である。 Nectria flavolanata B. et BR.日本新産。本種は従来はセイロンだけから知られていたが, 小笠原父島の他, 西表島および南米コロンビアの低地帯でも採集された。世界に広く分布している種であろう。分生子は楕円一円筒状で1-2室, 不規則に枝分れした分生子梗上に生じる。 Nectria azureo-ostiolata DOI新種。母島に比較的多い。子のう殼の乳頭状開口部は拡大して見ると盤状に発達して青紫色である。このような開口部をもつネクトリア属あるいは近縁属の種は既知種には例がない。分生子型はフザリウム型で, 麦芽寒天培地上では小分生子も厚膜胞子もつくらない。子のう殼開口部は青紫色ではないが, 本種に近縁と思われる種がジャワから記録されている。なお, 本種および他2種のカラー写真は科学朝日1977年4月号に載っている。 Ophionectria trichospora (B. et BR.) SACC.日本新産。母島にかなり多い。従来は中南米, ハワイおよび東南アジアの熱帯・亜熱帯に産することが知られていた。日本では小笠原母島および西表島で採集されたほか, 温帯である千葉県清澄-札郷でも採集されたことがある。ネクトリア科では特異な分類群で, 一属一種であり, 分生子時代も一属(form-genus)一種で特異な形態をもっている。

小笠原産の肉座菌目 (1)

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