肉座菌目およびその分生子型の分類学的研究 : VI. 琉球産ボタンタケ属およびネクトリア属数種について (1)

概要

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沖繩島および石垣島・西表島産肉座菌目の採集品のうち, 11種が現在までに同定できた。それらのうち, Hypocrea microsulfurea, H. cornea, および Nectria haematococca, N. massei は従来熱帯・亜熱帯から報告されている。また2新種 Hypocrea subalbocornea, H. ishigakiensis も採集できたが, いずれも熱帯・亜熱帯種と考えられる。 Hypocrea microsulfurea は, ニューブリテン島から記録され, 分生子型としては不規則な Verticillium のみが認められた。ところが, 沖繩島南部産株はごく少量の Verticillium 型を生じる他に, やはり少量ながら aleuriospore 型の別の分生子型をも生じた。さらに西表島のマングローブ上の Heterochaete 属菌に着生する株からは, 多量の aleuriospore のみが生じた。以上のことは, 不完全菌の分化の機構を考える上で重要な資料であると考えられる。 H. subalbocornea は西表島浦内川上流域で採集された新種である。当地域は菌類全般についても, 熱帯・亜熱帯性の興味深い種が多かった。本種は英国の E. H. J. コーナー博士が北ボルネオで採集しておられ, 博士はその標本を未発表のまま筆者に貸与して下さった。 H. ishigakiensis は, ボタンタケ属には珍らしく一端が尖った2次子嚢胞子 (Partspore) をもっている点で極めて特徴的である。 Nectria haematococca は, 沖繩諸島に多産する種で, 原記載はセイロンからである。日本からはこの報告が分類学的観点からの報告としては最初のようである。本菌の真正の被子器組織は早失性で, 一見子座組織が真正の被子器のようにみえる。分生子型は Fusarium solani 群で, 厚膜胞子をももつ。 N. massei はアフリカの黄金海岸から記録されている肉色で顕著な子座をもつ種で, 西表島の海水をかぶるような場所の林内で採集した。真正の被子器は子座組織内に明瞭に区別される。分生型は不規則な Phialospore 型で, 分生子は培養器内で極めて発芽しやすく, 未発芽分生子を見出すのは少々困難な場合がある。
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