歯質の脱灰による酸の中和
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概要
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感染性疾患であるう蝕により, 歯質内部に起る変化の一つは, 細菌の産生する酸による脱灰反応と考えられる。 この酸は, 周囲の歯質の溶解により, 中和されると思われるので, 多量の歯質中にごく微量の酸が発生した場合を想定して実験装置を作り, CO<SUB>2</SUB> Freeの蒸溜水100ml中に, 象牙質又はエナメル質粉末を懸濁し, 1mlの酸を添加して, 37℃で撹拌しながら溶液のpHの変動を, 自記記録計を用いて観察した。<BR>酸の添加によりpHは瞬間的に降下するが, その後, 徐々に上昇して一定の値に達する。 酸添加後, 2時間目の値を最終pHとし, 歯質粉末の大きさ, 懸濁濃度, 酸の種類及び濃度等の変化による中和力の差を調べた。 又懸濁液中に溶出したCa及びPの量を測定した。<BR>その結果, 歯質粉末が小さく, 懸濁濃度が高いほど酸添加によるpHの低下が少なく, その回復時間は短かかつた。又, 実験に用いた酸の中では, 乳酸が他の酸-酢酸, 蟻酸, プロピオン酸, コハク酸, 酪酸-に比して, 最も脱灰力が強かつた。<BR>エナメル質は象牙質よりも, 最終pHが低く, pH回復時間も長いことから, 溶解度が低いことが明らかになつた。<BR>もし, Dentino-Enamel Junctionで酸が発生したとすると, 溶解速度の早い象牙質の溶解により, 酸は直ちに中和され, エナメル質は殆ど溶解しないものと思う。これは以前の報告 (Onisi et al. 1968) で, 実験う蝕の初期の変化として, Ratの臼歯で観察された象牙質側にのみ見られる, 半月状脱灰像の形成過程を説明するものである。
- 有限責任中間法人 日本口腔衛生学会の論文
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