Tween60あるいはデオキシコール酸投与ラットの成長および小腸粘膜の消化吸収機能と形態に及ぼす食物繊維同時摂取の影響
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概要
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化学物質の大量投与による動物の成長遅延が,食物繊維の同時投与により完全に回復する場合がある.この効果の有効範囲と限界を知る目的で,非イオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート: Tween 60)とイオン系界面活性剤(デオキシコール酸ナトリウム: DOC)をラットに単独にあるいは食物繊維と同時に投与し,そのときの成長や小腸粘膜酵素活性に及ぼす影響を比較検討した. (1) 両物質の粘膜酵素活性(in vitro)への影響を調べたところ, Tween 60 (5%)はスクラーゼ活性を20%ほど阻害したが,ジペプチダーゼ活性は阻害しなかった.逆にDOC (0.5%)は後者の活性を強く阻害(90%)したが,スクラーゼ活性に対する阻害作用はみられなかった. (2) 麻酔下でのラット灌流空腸からのグルコース吸収は, Tween 60 (1.5%)共存下でも全く阻害されなかった. DOC共存下では20%ほどではあるが,有意に阻害された. (3) ラットの精製飼料にTween 60を15%添加すると(対照),激しい下痢を起こし,飼料摂取量,体重増加量とも減少したが,ゴボウ食物繊維(GDF)の7.5%同時添加により成長は完全に回復した.なお,精製基本飼料,およびGDF同時添加飼料を対照群にペアーフィーディングさせると成長速度に差がなくなったことから, Tween 60による成長遅延は摂取量の減少が主要因であること,また, GDFの効果はこの摂取量低下を完全に回復させる点にあることが明らかとなった. (4) 基本飼料に1% DOCを添加することにより,21日間の体重増加量は,無添加時の43%(有意)に減少した.このときの消化管粘膜の走査電顕像から,上皮細胞の剥離が観察された.一方GDF,コンニャクマンナン,カルボキシメチルセルロース,キトサンのおのおの7.5%をDOCと同時に投与してもDOCによる成長抑制は,改善されなかった.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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