β-カロチンの水中加熱により生ずるヨノン系化合物
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概要
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覆香の主要因をなしているヨノン系香気物質が製茶工程中にカロチノイドを前駆体として生成されることを証明するためβ-カロチンを原料として緑茶香気生成に近い条件下でモデル実験を行った.すなわち,β-カロチンを水とともに浴温90°C,120°C,150°Cで加熱して,その生成物をGC-MSで検討した. その結果,40の化合物が分離され,そのうち主要な成分として2, 6, 6-trimethyl-2-hydroxy-cyclohexanone, β-cyclocitral, β-ionone, 5, 6-epoxy-β-ionone, dihy-droactinidiolide, 2, 6, 6-trimethyl-2, 3-epoxy-cyclo-hexyliden-1-acetaldehydeを同定し,2, 6, 6-trimethyl-2-hydroxy-cyclohexan-1-aldehydeを推定した.これらの化合物はいずれもヨノン核を有しており,β-カロチンより形成されると考えられた.加熱温度の違いにより,各香気物質の生成量にはかなりの差が認められ,官能検査の結果とよく一致していた.すなわち,90°Cのものは5, 6-epoxy-β-iononeの比率が高いため花様の香りが強く,150°Cのものは2, 6, 6-trimethyl-2-hydroxy-cyclohexanone, 2, 6, 6-trimethyl-2-hydroxy-cyclo-hexan-1-aldehyde,dihydroactinidiolideの比率が高まり重厚な香気が形成され,中間の120°Cのものはその両方の香りとβ-cyclocitralによる青苦い香りを有していた.以上の結果より,製茶工程中における加熱温度が香気の形成に与える影響が大きいことも裏づけされた.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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