ニホンナシのボケ症状果, 石ナシ果における細胞壁多糖類及び細胞壁分解酵素活性の特徴
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概要
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ニホンナシにおいてボケ症状となる果実 (長十郎, 菊水, 92-7, イ-33), 及び石ナシとなる果実 (長十郎) の細胞壁成分が, それらの症状を顕著に示さない果実 (二十世紀, 豊水, 93-3) とどのように異なるかを, 細胞壁多糖類, その構成単糖類及び細胞壁分解酵素活性の変化に基づいて検討した.ナシ果実の細胞壁多糖類は, 水溶性多糖類 (9〜13%),次亜塩素酸ナトリウム可溶性多糖類 (3〜5%), EDTA-可溶性多糖類 (2%以下), 酸可溶性ヘミセルロース (23〜39%), アルカリ可溶性ヘミセルロース (16〜21%),セルロース (25〜36%) から構成されており, また細胞壁の構成単糖類はグルコース(35〜43%), ウロン酸 (26〜31%), キシロース (11〜19%), アラビノース (8〜13%), ガラクトース (4〜7%), ラムノース (1〜2%),マンノース (1%以下), フコース (1%以下) からなっていた.ボケ症状果における細胞壁中間層の酸可溶性ヘミセルロース成分は, 対照果 (同一品種でボケていない) よりもより分解されていた. この現象は, ボケ症状果におけるポリガラクチュロナーゼ活性がより高いことからも支持された. 一方, ボケ症状果におけるセルロース成分の分解はむしろ抑制されていた. これは, ボケ症状果においてエンドセルラース (中性型) 活性が低いこととも一致した. 以上の事実より, ボケ症状果の果肉は対照果のそれに比べて, 細胞同士の接着が弱く, 逆により強固な細胞壁構造を持つことが示唆された.石ナシ果において, 酸可溶性ヘミセルロース, セルロース成分の分解は対照果よりも少なかった. この抑制は, 症状果におけるポリガラクチュロナーゼ, エンドセルラーゼ, エキソセルラーゼ活性が, 対照果よりも低い結果とも一致した. このことより, 石ナシ果の果肉はより強い細胞同士の接着, より強固な細胞壁構造を維持していることが示唆された.品種間差に関しては, セルラーゼ, ポリガラクチュロナーゼ活性の強さ; さらには各多糖類組成にかなりの違いのあることが示唆された.
著者
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町田 裕
果樹研
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町田 裕
農林水産省果樹試験場育種部
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山木 昭平
農林水産省、果樹試
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佐藤 義彦
農林水産省果樹試験場
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山木 昭平
農林水産省果樹試験場
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山木 昭平
農林水産省, 果樹試験場, 育種部
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町田 裕
農林水産省果樹試験場
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