荒川低地における海成層上限の14C年代値と旧海水準認定にあたっての問題点

概要

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現荒川河口から約34〜42km内陸に位置する荒川右岸の荒川本流低地および支谷谷底平野において, 珪藻の環境指標種群の変遷および14C年代測定結果に基づいた海成層上限高度の認定とその堆積年代の推定を行った。荒川本流低地上で認定された海成層上限高度ならびにその堆積年代は, 内陸側から+3.3mで約6,000yr B. P., +2.9mで約5,500yr B. P., 支谷内では+3.3mで約6,900yr B. P. で, 珪藻指標種群から推定される淡水化への環境変化から, これらの海成層上限高度は旧海水準認定の資料となり得ることが明らかとなった。また, 海成層上限付近の層相変化から, 海成層上限高度は当時の朔望高潮位付近の高度を示すものと推定され, 旧海水準 (中等潮位) の認定には潮差が考慮されねばならないことが指摘された。藤本 (1990) は縄文海進最盛期の古奥東京湾の潮差は, 最大7m以上にも増幅されていた可能性のあることを指摘したが, 今後は具体的な潮差復元に必要な海底地形の時系列的復元や, 摩擦による振幅の減衰を考慮した潮差の復元などの必要性が指摘された。
東北地理学会の論文