剌戟性ガスおよび粉塵の無菌動物呼吸器官に対する作用に関する実験的研究

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大気汚染物質による呼吸器官の疾患の発生ないしは進展の機序については, 諸種の要因が複雑に交錯して働いている。動物による実験公害研究では, この錯雑する諸要因を分析して行くことが一つの目的である。大気汚染物質をモデル的に刺戟ガス・有機および無機粉塵・微生物の3大カテゴリーに分け, 無菌動物を用いる実験を計画的に行ない, 得られた成績について特徴的な点を述べれば次のようである。各種の微量汚染物の呼吸器官内侵入によってこの器官にトレーニング効果が与えられる。無菌モルモットにおいては, 外来微粒体が容易に気管・気管支粘膜を通過する。普通飼育動物ではこの現象が認められない。しかし, 普通モルモットでもSO2ガスの吸入により異物侵入が容易に行なわれるようになる。呼吸器官のもつ自浄能の程度は, 無菌動物では普通動物よりも低く, またSO2ガス吸入によって両者ともそれらのもつ自浄能が低減せしめられる。葡萄球菌 (209P) 浮遊環境中に普通動物を入れても, また普通動物に前もってSO2ガスを吸入せしめておいて, この菌を吸入せしめても発病を認めない。無菌動物にSO2ガスを吸入せしめ, 次に菌浮遊環境に入れると約半数の動物が出血性気管支肺炎の病像を呈し, 死亡する。なお, SO2ガスおよびこの菌の単独投与では死亡せず, 気管支肺炎の病像は認められない。以上のように, 葡萄球菌による実験的肺炎の発生に関し, 少なくとも, トレーニング効果の有無が作用し, また刺戟ガスの共同作用としてあらわれる自浄能の低下および上皮通過性の促進などが総合的に働いていることが明らかとなった。
日本衛生学会の論文

剌戟性ガスおよび粉塵の無菌動物呼吸器官に対する作用に関する実験的研究

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