聴神経腫瘍の早期診断と経迷路手術 : 7例の経験例にもとづいて
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概要
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慶応義塾大学病院耳鼻咽喉科難聴外来において, 過去2年間に7例の聴神経腫瘍を診断し, 経迷路法及び後頭下開頭―経迷路合併法にて腫瘍を摘出した.<BR>この7例の経験からいくつかの注目すべき点を見い出した.<BR>耳鼻科医は聴神経腫瘍の発見を常に心がける必要がある. 聴神経腫瘍の症状は定型的でないこともあるので注意深く経過を観察すべきである. また, 腫瘍の存在が疑われれば, 積極的に後頭蓋窩造影法を行う. これは耳鼻科医が腫瘍を早期に発見する一つの方法である. 小さい腫瘍の場合は, 第8神経以外の症状がないばかりでなく, 聴力・前庭検査でも, 常に後迷路性難聴や半規管麻痺を示すとは限らない. 重要なことは, 多くの症例で, 最初の症状が聴力の低下と耳鳴であることである.<BR>後頭蓋窩造影法は聴神経腫瘍の診断にはかかせない方法で, その手技はすでにWilliam House等によつて仔細に報告されている, 我々はマイオジール (1.5-2.5cc) を使つて後頭蓋造影法を試みた. この方法が内耳道内の腫瘍の存在とその大きさを見るためには最もよい方法と考えている.<BR>我々は7例の腫瘍を経迷路法あるいは後頭蓋窩―経迷路合併法によつて摘出したが, これらの手術の経験から次の4点が重要であると思われる.<BR>1. 脳外科医との協力は何れの症例でも必要である.<BR>2. 腫瘍の大きさが診断された段階で, 脳外科医と共に手術の方法を決めるべきである.<BR>3. 顔面神経麻痺を残さないために, 顔面神経を確認した上で腫瘍摘出するのが良策と考える.<BR>4. 経迷路手術や中頭蓋窩経由手術に対しては脳外科の立場からの批判もある. 各々の症例において手術の選択は慎重にすべきである. しかし, 経迷路手術や中頭蓋窩経由手術法は早期の聴神経腫瘍の手術法として良い方法と思われる.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
著者
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古賀 慶次郎
慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
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堀内 正敏
慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
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川城 信子
慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
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斉藤 瑛
慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科教室
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本村 美雄
慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科教室
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川原 夏子
慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科教室
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堀内 正敏
慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科教室
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川城 信子
慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科教室
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