鉄鋼の非金属化合物中の微量炭素の定量方法の研究 : 鋼中に含有される非金属化合物の分析化学的研究(第1報)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
金属中に酸素,窒素,炭素,硫黄,燐などが如何なる化合状態で介在しているかはその金属の性質を大きく左右するものとしてかなり古くより研究されて来ているが,難問題でありいまだ十分な解決がなされていない.また原子力用材料とか超高速度航空機用材料とか,新工業の進展にともない新金属材料が数多く研究せられ,ますますこれら金属中の非金属化合物の組成分析は重要な問題となってきた(ここでいう金属中の非金属化合物とはBeeghlyによる"金属中の金属元素と非金属元素との化合物"という定義に従った).<BR>さてガスタービンの出現によって優秀な抗クリープ鋼が重視せられてきたが,高温における高合金鋼のクリープ抵抗は固溶体外にできた炭化物の組成とその分布に大いに関係するといわれている.従ってその性能を改良するために,鋼中の非金属化合物の一つである炭化物の性質を知る必要が生じてきた.顕微鏡あるいは電子顕微鏡を用うれば,炭化物粒の大きさと分布は知ることができる.しかしより正確な結論を得るために幾種類かの炭化物がある場合にはこれらを区分し,大体の量を推定しようとする方法が要求せられている.このためにX線廻析法は大変よい方法であるがこれのみにてこれらを解明して行くには不十分であり化学分析と相まって十分な解決が期待される.<BR>鉄鋼中より炭化物,窒化物,酸化物などを取出す方法については種種研究中であるが,本論文では取出された抽出物中の炭素の定量方法について先ず研究した.<BR>いわゆる非金属化合物(nonmetallic compounds)はほぼ"1%以下"から5〜6%程度のものまで種種あるが,これを種種の分析試験に供するので,その非金属化合物中の炭素の分析用試料としては数mgしか使用できず,この程度の試料量で分析可能な方法が考察せられねばならない.<BR>JIS G 1211の鋼および銑鉄中の炭素定量方法では試料を酸素気流中で燃焼させ,発生した炭酸ガスをソーダライム,または水酸化カリウムに吸收させて,その重量増加により定量しようとするものであるが,筆者の場合は炭酸ガスの重量にして約0.5mg前後程度の炭素量を分析の対象とせねばならないので,微量天秤の使用が不可避であり,かなりの熟練を要する.和田,石井により微量の場合が報告されている.また生成炭酸ガスを一定濃度のアルカリ溶液または水酸化バリウムに吸收させ,中和滴定,電導度滴定にて定量せんとする方法も種種報告されている.また発生せる炭酸ガスを液体酸素でもって冷却し,ドライアイスとしてトラップに集めた後,気化して圧力上昇を測定して定量する方法もあるが,筆者はガス試料容器にその一部を採取し,アルゴンを内部標準として質量分析計にて定量する方法を試みた.
- 社団法人 日本分析化学会の論文
著者
関連論文
- 電子分光法による固体表面の定量分析--XPSおよびAESを中心として
- X線光電子スペクトル法による銅-ニッケル及びパラジウム-銀合金の表面組成分析における問題点
- レーザー誘起光音響検出法による水溶液中の過マンガン酸イオンの極微量定量
- 5-ヒドロキシキノリンのけい光寿命と励起状態の反応性
- 化学反応系の動的な分析化学的研究
- 7-ヒドロキシクマリンのけい光の時間分解スペクトル
- セチルピリジニウムクロリド共存下で2-(2-チアゾリルアゾ)-5-ジメチルアミノフェノールによるトリウムの吸光光度定量
- ゼフィラミン共存下で2-(2-チアゾリルアゾ)-4-メチルフェノ-ルによるビスマスの吸光光度定量
- 表面のキャラクタリゼ-ション (機器分析最近の進歩)
- スパークイオン源質量分析法による銀メンブラン・フィルター上に捕集した大気浮遊粉じん中の微量元素の分析
- 機器による工業分析化学の基礎的研究 (1970年度日本分析化学会学会賞受賞者〔業績紹介〕)
- 金属中ガス分析法の進歩-3-同位体布釈法
- 紫外スペクトルの吸収強度
- 放射線イオン化検出器による微量無機ガスの分析方法の研究
- 質量分析による有機化合物の構造解析法の研究 : 二,三の含酸素化合物について
- 染料中間体及びその原料の赤外線吸収スペクトル
- 冷原子―非分散原子けい光法による毛髪中の微量水銀の定量
- 高周波スパークイオン源で生成するイオンのエネルギー分布
- チオフェノキシルラジカルの吸牧スペクトル
- Flash Photolysis of Aromatic Thiols in Aqueous Solution
- Flash Photolysis of Aromatic Thiols
- 抽出-黒鉛スパーク法による金属ウラン中の鉄ニッケル,銅の定量 : ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム-クロロホルム抽出
- 分析化学の今後のあり方
- マイクロ波放電発光スペクトル法による酸素の同位体比の測定
- 高周波放電発光スペクトル法を利用したガスクロマトグラフ用検出器
- 金属中の酸素分析用アーク融解-ガスクロマトグラフ法の研究
- 発光X線分析装置とその応用
- 赤外吸収スペクトルの強度
- X線マイクロアナライザー法の検出限界
- 鉄鋼中の窒素の微量比色定量方法の研究 : 鋼中に含有される非金属化合物の分析化学的研究(第2報)
- 鉄鋼の非金属化合物中の微量炭素の定量方法の研究 : 鋼中に含有される非金属化合物の分析化学的研究(第1報)
- ナフタレン核二置換体の赤外線吸収スペクトル
- 赤外線吸収スペクトルによる定量分析(第3報) : 流動パラフィン中の分散系の定量方法
- 赤外線吸収スペクトルによるコールタール高沸点成分の二,三の分析
- 赤外線吸収スペクトルによる定量分析(第4報) : 有機合成原料中の微量不純物の検知限度の研究
- 赤外線吸收スペクトルによるキノリン溜分及びイソキノリン溜分の分析
- 赤外線吸收スペクトルの有機分析化学への応用
- ナフタリン-置換体の赤外線吸收スペクトル
- 光子計数法を用いた時間分解分光計の試作とその応用
- 高周波放電によって生成する原子状酸素の分析とその応用
- 試料採取方法への推計学の応用 : 最適精度と最適費用
- 赤外線吸収スペクトルによる定量分析(第2報) : Dinitro Cyclohexyl Phenolの異性体の定量
- 分析試料採取方法の研究 : 二次試料調製について
- 化学分析の精度,正確さ,信頼性について
- 赤外線吸收スペクトルによる定量分析(第1報) : 補償法による高純度γ-BHCの定量
- ベンゼン核異性体の赤外線吸収スペクトル
- 新しい分光法とその応用-1-概論(講座)
- 銀,パラジウムおよびこれらの合金中の酸素の定量
- 同位体希釈法による鉄鋼中の窒素の定量
- 不しゅう鋼中の酸素の定量
- 同位体希釈法による金属中の酸素の定量
- 金属中ガス分析法の進歩-6-発光分光分析
- マンガンよおびクロムの真空融解炉中におけるガス吸収について
- タイトル無し
- タイトル無し
- (5) 石炭酸樹脂のアセトン抽出物に関する研究
- (6) 赤外線吸收スペクトル分析法による熱硬化性樹脂の研究:第I報 レジトールに就いて