鉄鋼中の窒素の微量比色定量方法の研究 : 鋼中に含有される非金属化合物の分析化学的研究(第2報)
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概要
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工業の発展にともないますます優秀な高性能の鋼材の量産を必要としてきている.しかし共存微量元素によりその材質は大きく左右されがちであり,これについて系統的な研究がなされつつある.窒素の影響については古くから研究せられ,鉄に脆性を与えるといわれ,その分析は現場分析として重要なものの一つである.本邦においても学振第19委員会,JIS委員会などで多くの研究がなされており,ますますこれの迅速化の確立が要望せられている.現在現場分析としては,ケールダール法が用いられているが,迅速分析としては試料分解に時間のかかることが最も欠点となっている.もし微量窒素の定量方法が工夫されて試料を少量となし得るならば,分解時間が短縮せられ迅速化せられるであろう.<BR>また最近に至って窒素が如何なる化合状態にて存在しているかがその材質に大きく影響することが次第に明らかにされつつあり,そのための分析方法も種種問題となってきている.たとえばアルミニウムでキルしたものでは,窒素は鉄の窒化物として存在するよりも大部分が窒化アルミニウムとして存在するといわれ,これらの分離定量方法がH.F.Beeghlyらにより研究せられてきている.普通鉄鋼中の窒素含有量は0.001〜0.01%程度で,微量である上にさらに化合状態別に分離定量しようとするならばますます微量分析方法が必要となってくる.<BR>窒素の分析方法には乾式および湿式の種種の方法が発表せられているが,最も多く利用せられているのはケールダール法である.すなわち塩酸あるいは硫酸などで試料を分解して窒素をアンモニウム塩に変え,次に水酸化ナトリウムを加えて蒸溜し,溜出アンモニアを中和滴定法により定量する.この方法も最近種種研究改良せられ,たとえば蒸溜には水蒸気蒸溜が,中和滴定の代りにネスラー試薬による比色定量が研究せられて,現場分析として利用されつつある.窒素の比色定量にはネスラー試薬による方法,石炭酸-次亜塩素酸法などがあるが,筆者の経験によればネスラー試薬による比色定量はその発色条件をかなり厳密にしても分析値の変動が大きく,また検量線も日日変動するのでしばしば作製しなおさねばならなかった.R.I.Nicholson,J.Epsteinらはシアナイド基の定量にピリジン-ピラゾロン試薬による比色定量を研究し,呈色も安定であり,感度のよいことを報告している.筆者はこれを利用する新しいアンモニウム型体の窒素の比色定量方法を研究し,あわせて水蒸気蒸溜を用いる微量ケールダール蒸溜装置を試作して,各種の鉄鋼試料,および鉄鋼中より電解法にて抽出された非金属化合物中の窒素の定量を行った.
- 社団法人 日本分析化学会の論文
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