突発性難聴症状を呈したidiopathic endolymphatic hydrops症例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1) 目的Mènière病と突発性難聴とは臨床的に類似した面が多く,しばしば両者の区別の明らかでない症例に遭遇する場合が少なくない、一方,病理学的には両者は全く異なつた病理所見を呈する疾患として報告されてきた、すなわち,前者はidiopathic endolymphatic hydropsを呈するのに反し,後者はviralendolymphatic labyrinthitisに類似した像を示し,少なくとも内リンパ水腫像を呈したものは報告されていない.私達は今回臨床的には突発性難聴の病歴をもち,その側頭骨に内リンパ水腫像を示した症例を経験した.本症例は高齢で死亡したため,側頭骨内をこは広汎な老人性変化が合併していた.そこで,内リンパ水腫と老人性変化の二つの観点から本症例の側頭骨病理組織縁を整理報告し,文献的考察を試みた.2)方法死後両側側頭骨を摘出して10%ホルマリン液で固定した.5%三塩化醋酸液にて脱灰後,上昇アルコール列で脱水し,セロイジンに包埋した.20-25μの厚さの水平断連続切片を作成し,H-E染色を施こして光学顕微鏡下に観察した.必要に応じてMallory-azan染色,鍍銀染色, Van Giesson染色を施こし,観察した.また,蝸牛病変の拡がりを量的に観察するためgraphic reconstructionを行なつた.3)結果臨床的に右耳に突発性難聴の病歴をもち,80才の高齢で死亡した症例の側頭骨病理組織所見を報告し,文献的考察を行なつた.結果は以下の通りである.1)右耳にidiopathic endolymphatic hydrops像を見た.文献的にMeni-ere病と突発性難聴の病理を検討した結果,本症例はMeniere病と同一範〓に属する突発性難聴であろうと考察した.2)両耳にneural typeに加えてmatabolic typeの病変を主とする老人性難聴の合併をみた.3)脳底動脈,内耳道内動脈の高度の動脈硬化病変は内耳に見られた不規周な血管条萎縮病変との相関を推測させた.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
著者
関連論文
- 80. ヒト側頭骨内における顔面神経および神経管の発生について
- 46. ヒト側頭骨内における顔面神経および顔面神経管の発生学的観察
- 92. 18-trisomy症候群における側頭骨病理所見
- 13-15trisomyにおける内耳奇形 : 側頭骨病理組織所見
- 71. 先天性外耳道閉鎖症の発生病理 : ヒト胎芽聴器の組織学的観察
- 耳硬化症に関する統計的観察
- 聴器先天異常の臨床的観察
- 突発性難聴症状を呈したidiopathic endolymphatic hydrops症例
- 両側先天性中耳畸形, 特に鐙骨畸形の一症例について
- 我教室における臨床的耳硬化症例について
- 耳硬化症に対する内耳開窓術の聴力成績
- 聴器伝音系奇形に関する胎生学的研究 : ―超軟X線撮影による人胎児聴器骨化過程の観察―
- Cogan症候群の1例
- モルモットにおける内リンパ水腫生成と,外側半規管切断による水腫減退に関する実験
- 無カタラーゼ血液症 : とくに本邦にみる先天性血液疾患
- 聴器伝音系の先天性奇形に対する手術的療法と胎生学的考察について
- 父子3人に現れた外耳•中耳奇形
- 昭和37年度までの Acatalasemia Hypocatalasemia調査集計
- 二次的内耳開窓術の手術適応並びに成績
- Stapedectomy後のperilymph fistula 2症例
- 聳耳の整形
- Cryosurgeryの治療経験--主に血管腫について
- 早期乳児に生じた咽後膿瘍の一治験例
- On the Materials for New Drum and Columella in Tympanoplasty