二次的内耳開窓術の手術適応並びに成績
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概要
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われわれは, 過去10年間に, 二次的内耳開窓術を12症例施行した. それらの大多数は, 鼓室成形術あるいは卵円窓手術によつて聴力改善のみられなかつた症例である. また, それらの数例は, 慢性中耳炎で単なる乳様突起部削開術を受けた後, 高度の伝音系難聴を訴えていたものである. これらの経験より, 二次的内耳開窓術の手術適応と成績を検討し次のような所見が得られた.<BR>1. 二次的内耳開窓術を施行した12症例中6例において, 会話音域平均で30dB以内への聴力恢復に成功した.<BR>2. 6耳では満足すべき成績が得られなかった.<BR>a. 2耳では, 術前の骨導が正常と思われ, 術後も骨導が正常と思われるにも拘わらず, 二次的内耳開窓術後, わずかに聴力改善がみられたに過ぎなかった.<BR>b. 1耳では, 高度の難聴を経験し, 術後性迷路炎の併発と考えられた.<BR>c. 2耳では, 術前の骨導は正常範囲外にあり, 従って内耳開窓術は不適当と考えられた.<BR>d. 1耳では, 術前の骨導は明らかに正常範囲外にあり, それ故, この症例には内耳開窓術は施行されるべきでなかった.<BR>3. これら不成功例の凡べてにおいては, 手術そのものは成功例と同様に満足に遂行された. そして, これらの症例には成功例の群と比較して, 手術中も, とりたでていうような注意すべき所見はなかった. しかし, これら6例の不成功例の凡べてに, 術中術後に普通みられる眩暈や嘔吐がみられなかったのは注目に値する. この点は, 今後さらに研究を進めることによって解決されるべき興味ある問題を提起する.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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