モルモットにおける内リンパ水腫生成と,外側半規管切断による水腫減退に関する実験
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概要
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I.目的:メニエール病の病態が内リンパ水腫であるとする概念は,•日では一般的となつている.また内リンパの主たる吸収部位は内リンパ〓であるとされ,これを破壊したり内リンパ管を閉塞することによつて実験的に内リンパ水腫を生成し得ることが報告されている.(1)本実験においても,モルモットの内リンパ管を閉塞すると,その全例の膜迷路に内リンパ水腫が生成されることを確認したので,(2)さらに,内リンパ水腫生成後に,外側半規管の膜迷路を切断して,その水腫が減退するか否かを組織学的に検索しようと試みたものである.II.実験1:(1)実験方法;モルモットの内リンパ管を,硬脳膜外法により閉塞したのち2週,3週,1カ月,2カ月目に生体還流法により固定し,連続切片作製後ヘマトキシリン•エオジン重染色を行つて光顕により観察した.(2)実験結果;モルモットの全例において内リンパ水腫が生成されており,その水腫の程度は2週から2カ月の間のものでほとんど同じであつた.また術後減少した体重2週目には回復したので「実験2」において,内リンパ管閉塞後15日目に外側半規管を切断することにした.III.実験2:(1)実験方法;2週間前に内リンパ管を閉塞されたモルモットの外側膜半規管を,鋭利なメスで切断した.術後5時間,1日,3日,1週,2週目に生体還流固定し,「実験1」と同方法で切片標本作製後,光顕で観察した.(2)実験結果;8例中4例において内リンパ水腫が減退していたが,これは過剰な内リンパが外リンパ腔に流出したためと考えられた.蝸牛管の水腫も減退したが,これにはcollapseを生じたものはなかつた.これは切断された膜半規管と蝸牛管の問に卵形〓,球形〓,utriculo-endlymphatic valveが介在するためにcollapseすることから免れたものと考えられた.ductus reuniens は内リンバが蝸牛管より流出するのを防禦する機能は持つていないものと考えられた.内リンパ水腫の持続した4例は,外側膜半規管が再閉鎖したため,あるいは内耳炎を合併したために生じたものであつた.IV.結語:内耳炎および切断部の閉鎖を防ぐことがでぎるならば,膜半規管切断術は内リンパ水腫を減退させる手術療法のひとつとして,適用でぎる可能性があり,その際蝸牛手術障害を与えないですむものと考えられた.
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