内耳の空洞様奇形による一側高度難聴の1例
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概要
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幼児期よりの右高度難聴を訴える55才の女性について検索した成績をのべた.機能検査の成績では右側ほほ緩ろうであり,温度性眼振は誘発されなかった.ステソベルス法による内耳の単純レ線像及び3方向の内耳断層レ線像によつて,右側骨迷路の位置に一致して存在する一つの大きな空洞様構造をみとめた.外及び上半規管,並びに蝸牛は存在せず,内耳道は著明に狭窄を示した.左側はほぼ正常であつた.胎生期の内耳の発育の様式から考えて,この奇形は聴小嚢の発育が停止したものであると推測された.その意〓でこの「内耳空洞様奇形」ほ一つの疾患単位をなすものと理解することが可能である.この型の内耳奇形は,内耳の断層レ線像によるまでもなく,通常のステソベルス法によつて,特に外半規管の形態に注目することによつて臨床的に診断され得ると考えられた.それにもかかわらず本症の報告例が少ないことは,実際に本症が稀な疾患であることもさることながら,内耳奇形の診断に対して一般的な関心がもたれ難かつた点にもその一つの理由があると思われた.上記の観点から,〓後この種の症例がより積極的に検索,報告されることを期待して,これを「先天性内耳空洞奇形」又は「先天性内耳空洞症」と呼ぶことを提唱した.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
著者
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立木 孝
岩手医科大学
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村井 盛子
岩手医科大学医学部,耳鼻咽喉科学講座
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本間 利美
岩手医科大学耳鼻咽喉科学教室
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村井 盛子
岩手医科大学医学部耳鼻咽喉科学教室
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本間 利美
岩手医科大学医学部耳鼻咽喉科学教室
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立木 孝
岩手医科大
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