肛門疾患にみられる排便障害 : 後編 排便障害の手術前後における消長について
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概要
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肛門疾患に見られる排便障害はいずれの疾患にも高率に出現し,疾患の種類によつてそれぞれ特徴を有していることは前編で述べた.同じ患者を対象として,手術前後における排便障害の消長について調べた.その結果,術前に排便障害があった患者の大部分で,術後排便障害が消失あるいは少し残る程度となり,相変らず残る,悪化した,新たに現われた例は8%に過ぎない.内容的にはほとんどの例で排便回数が正常化し,排便時間が短縮している.胃腸の具合,身体の調子も良くなつたと感謝する者も多い.疾患別に見ても,術式に問題があり再発率が高かった直腸脱を除いて,いずれの疾患においても高率な排便障害の消失を見ている,などのことが分つた.<BR>術後も排便障害が継続,悪化あるいは新たに出現した患者は49名で全症例の8%に当るが,訴えとしては便の排出困難,便柱狭小,残便感などが多い.これらの訴えを術後所見と対比してみると特に異常を認めない例が過半数を占め,術後の異和感が十分消失していないことを示す.異常所見としては狭窄,瘢痕化,癒合,難治,スパスムス,痔核残存等の各々少数例があり,簡単な処置を加えて軽快している.ガス,便がもれるという訴えも多かつたが軽度で,括約筋広範切断例に多く,異常所見を認めない例も少なくない..注意すべきは肛門に異常なく,大腸疾患が発見された5例があったことである.<BR>術後に排便障害を来たさぬ手術法としては,痔核に対しては障害の多いホワイトヘッド氏法は行うべきでない.結紮切除法においても肛門上皮を全周の40%は残すよう心掛ける.痔瘻では括約筋を不必要に損なわないようにし,しかも外へのdrainageは十分行なう.裂肛および術後狭窄では後方(6時)の内括約筋切開により肛門を拡げ,切開部をsliding skin graftで覆う.ホワイトヘッド術後粘膜脱には結紮切除とsliding skin graftを併用する.<BR>以上要するに肛門の生理機能を損なわず,スムーズに治癒するような創の形を作ることであり,また術前1にあつた排便障害の訴えを解消するような手術を行うことにある.
著者
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隅越 幸男
社会保険中央総合病院大腸肛門病センター
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高野 正博
社会保険中央総合病院肛門病センター
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岡田 光生
社会保険中央・大腸肛門病科
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佐藤 昭二
社会保険中央総合病院肛門病センター
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平塚 襄
社会保険中央総合病院肛門病センター
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平塚 襄
社会保険中央総合病院 肛門病センター
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