実験的肝障害および肝薬物代謝酵素系に及ぼす五味子リグナン成分Gomisin Aの作用
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概要
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五味子リグナン成分gomisin Aを経口適用した際の肝障害抑制作用をCCl<SUB>4</SUB>,d-galactosamineおよびdl-ethionine誘発実験的肝障害モデルにて調べるとともにその過程で観察されたgomisin Aの肝重量増加現象の発現機序を解明するため,同化合物の肝薬物代謝酵素系に及ぼす作用を中心に検討した.gomisin Aは障害発生機序の異なる3種の肝障害において程度に差はあるものの血清生化学的にはトランスアミナーゼの漏出を,組織学的には肝細胞の変性・壊死,それに伴う炎症性反応ならびに脂肪沈着の出現を非特異的に抑制した.また各肝障害物質投与による肝重量の増加はgomisin Aの併用によりさらに助長された.正常動物においてもgomisin Aは30ないし100 mg/kgの4日間経口投与により肝重量を有意に増加した.この際のgomisin Aの血清生化学値,肝脂質,肝薬物代謝酵素系,肝蛋白合成能ならびにhexobarbital睡眠に及ぼす作用態度はphenobarbitalのそれとよく類似していた.すなわち,gomisin A投与により生化学的には血清中性脂肪の著しい低下および肝脂質の減少が,肝薬物代謝酵素系に対してはmicrosome画分のcytochrome b<SUB>5</SUB>およびP-450含量の増加とともにNADPH cytochrome C reductase活性,aminopyrine N-demethylase活性および7-ethoxycoumarin O-deethylase活性の亢進やcytochrome P-450あたりの3,4-benzo(a)pyrene hydroxylase活性の減少などが,さらに肝蛋白画分への<SUP>14</SUP>C-phenylalanineの取り込み促進ならびにhexobarbitalによる睡眠時間の短縮が認められた.しかし,CCl<SUB>4</SUB>致死毒性に対してはphenobarbitalは増悪,gomisin Aは抑制傾向と両者の間に著明な差がみられた.以上の結果から,gomisin Aは経口適用でも肝障害に対して改善作用を示すことが確かめられるとともに同化合物は脂質低下作用ならびに肝蛋白合成促進作用を有しており,その肝重量増加作用は肝実質障害を伴わない薬物代謝機能の亢進に基づく現象と考えられる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
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油田 正樹
(株)津村薬理
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竹田 茂文
ツムラ ツムラ中研
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竹田 茂文
大阪市立大学医学部第3内科
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須藤 和彦
(株)津村順天堂津村薬理研究所
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藤井 祐一
(株)津村順天堂津村薬理研究所
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細谷 英吉
(株)津村順天堂津村薬理研究所
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竹田 茂文
(株)津村順天堂津村薬理研究所
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新井 一郎
(株)津村順天堂津村薬理研究所
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加瀬 義夫
(株)津村順天堂津村薬理研究所
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大倉 靖史
(株)津村順天堂津村薬理研究所
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布野 秀二
(株)津村順天堂津村薬理研究所
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前村 俊一
(株)津村順天堂津村薬理研究所
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油田 正樹
(株)津村順天堂津村薬理研究所
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