実験的肝障害に対するチオール化合物の影響第4報 : Ethionine肝障害に対するTiopronin,Glutathione およびCysteineの解毒作用
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概要
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ethionine(Eth)投与によって上昇するS-GPTはtiopronin(2-mercaptopropionylglycine),glutathione,cysteineなどのチオール化合物投与により抑制されるが,tioproninはglutathione,cysteineよりも強く抑制することが認められた.すなわち,チオール化合物の種類によって抑制作用に差のある結果であった.尿中代謝物を薄属クロマトグラフィーで調べるとEth投与によってEth,ethionine sulfoxideが検出され,Ethとtioproninを投与するとEth,ethionine sulfoxideの他にS-ethyltioproninの存在が認められた.Ethとglutathioneまたはcysteineを投与した尿中にはこれらのS-ethyl誘導体は認められなかった.ガスクロマトグラフィーを用いてEthおよびその代謝物を測定した結果,Eth投与72時間後までの尿中Eht累積排泄量はEth投与群で40.7%,Eth-tiopronin投与群で23.6%,Eth-glutathione投与群で38.2%排泄された.Eth-tiopronin投与群の尿中にはS-ethyltioproninが13.6%排泄された.また,in vitroにおいてもS-adenosylethionineの存在下でtioproninからS-ethyltioproninの生成が認められた.Eth肝障害に対するtioproninの解毒作用はtioproninがEthのethyl基転移反応の受容体となってEthの1部をS-ethyltiopronlnとして排泄し,S-adenosylhomocysteineを再び生体に利用し,この結果,肝臓中のS-adenosylethionineは減少しEth肝障害を抑制するものと考えられる.glutathione,cysteineはethyl基転移反応の受容体とはならず,Ethに対する解毒作用は認められなかった.Eth肝障害に対するglutathione,cysteineの抑制作用については脂質過酸化反応の抑制などによって効果を示すものと思われ,tioproninの場合はさらにこの作用に解毒効果が加わってEth肝障害を強く抑制したものと考えられる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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