肉牛における供胚牛準備のための省力化,FSH-Pによる多排卵誘起処置および1回授精が採卵成績に及ぼす影響
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概要
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本研究では,多排卵誘起処理のための供胚肉牛の準備と人工授精プログラムの省力化およびFSH-P投与による多排卵誘起方法の効率化を検討した.A区では,正常性周期を2回反復した牛45頭のうち,FSH-Pの1日2回4日間漸減投与(FSH-P総量28mg)による多排卵誘起処理により41頭が発情を示し胚の回収が行なわれた.A区は通常広く一般に行なわれ,著者らも従来より実施してきた方法であり,以下従来の常法区と称する.人工授精は,発情確認当日およびその翌日に計4ユニットの新鮮精液を用いて行なわれた.性周期を確認せず無作為に11日間隔で2回PGF2α(15mg)を投与した27頭のうち,2回目投与後に23頭(85)が発情を示し,それらと自然発情の2頭を加えた25頭をB区(6頭),C区(10頭)およびD区(9頭)に割り当てた.発情後2〜4日目にFSH-Pを10mgあるいは5mg投与して1日2回3日間漸減投与方式と組み合わせたB区あるいはC区およびFSH-P前投与処理のないD区(FSH-P総量24mg)で,それぞれ6頭,9頭,9頭が多排卵処理により発情を示し,それぞれ5頭,9頭,7頭で脛の回収が行なわれた.B区,C区およびD区では,スタンディング発情開始24時間後に1ユニットの凍結精液を人工授精した.供胚牛1頭当たり平均黄体数,平均採取卵数および平均移植可能胚数において各試験区間に有意差は認められなかった.移植可能胚が得られた供胚牛の割合において,B+C+D区が従来の常法区よりも高かった(91% vs66%;P<0.05).従来の常法区で黄体数の個体間のばらつきがB区,D区およびB+C+D区よりも大きかった.本研究の結果から,11日間隔での2回PGF2α投与による供胚牛の準備,FSH-Pの3日間漸減投与およびスタンディング発情開始24時間後の1ユニットの凍結精液による人工授精方式を用いても,肉牛において従来の多排卵処理•新鮮精液授精による方法と同等の採卵成績が得られることが示唆された.ただし,以上の結果は牛群の良好な飼養•繁殖管理およびスタンディング発情の開始を確実に把握することが前提条件であると考えられた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
著者
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小島 敏之
農林水産省家畜改良センター
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小島 敏之
鹿児島大学農学部
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小島 敏之
農水省畜産試験場
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小栗 紀彦
農水省畜産試験場
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小島 敏之
National Livestock Breeding Center Ministry Of Agriculture
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小島 敏之
畜産試験場
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相馬 正
農林水産省畜産試験場
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小栗 紀彦
農林水産省畜産試験場
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