連続培養におけるルーメン微生物による繊維の消化に及ぼす易発酵性炭水化物の影響
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概要
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pHを6.7に保った連続培養(発酵槽300ml)を5日間行ない,繊維の消化に及ぼす易発酵性炭水化物の影響を調べた.混合ルーメン微生物を用い,乾草粉末と濃厚飼料(各3g/d)から成る基礎飼料を一日2回給与した対照区と比較し,基礎飼料に1.5g/dのとうもろこしデンプンを添加した場合には,中性デタージェント繊維の消化率が増加したが,5g/dのデンプンを添加した場合には,減少した.5g/dのグルコースを連続注入したところ,繊維の消化は更に低下した.増殖培地にボールミル•セルロースを添加した培養液を連続注入して混合ルーメンバクテリアを培養し,この培養液に種々の濃度のグルコースを添加した場合の影響を調べたところ,低濃度(2g/l)のグルコースではセルロースの分解が増加したが,高濃度(4および8g/l)では減少した.また,高または低濃度の可溶性デンプンを連続注入した場合も同様の結果となり,連続培養5日後の発酵槽内の液を半量更新し,セルロールのみを加えた後,閉鎖系で更に12時間培養したところ,高濃度のデンプンで5日間前培養したものの方がセルロース分解が大きく,前培養後のセルロース分解菌の量が多かったと推測された.従って,高レベルのデンプンでセルロース消化が低下するのはセルロース分解菌の減少によるものではなく,デンプンの消化によって生ずるグルコースやマルトースがセルロースの利用を抑制するという,基質利用の優先性によるものと推測された.一方,低レベルのデンプンまたはグルコースの場合は,グルコースやマルトースが速やかに消費されるためセルロース利用が抑制を受ける時間が少なく,むしろ易発酵性基質の利用によリセルロース分解菌が増加するため,また恐らく他菌の増殖が好ましい影響を与えるために,全期間におけるセルロース分解が増加するものと考えられた.一日に2回デンプンを給与した場合は,発酵槽内での易発酵性基質の濃度と存在時間によって,繊維の消化は正または負の影響を受けると考えられた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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