愛知県における乳牛集団の繁殖構造の変化が集団の近交度に及ぼす影響について
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概要
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1950年から1960までの間に,愛知県の乳牛集団の繁殖構造は,人工授精技術の向上普及にともなつて,かなりモザイク型に近い型から,ほとんど完全な拡散型にまで変化した.この変化は,供用種雄牛数の減少,および種雄牛の子の数の変異の増大という2つの要因を介して,集団の有効な大きさを,この10年間に1/3近くにまで縮小する原因となつた.この間の有効な大きさの平均値は,1年当たり約100,1世代当たり160〜180となる.また移入率は平均40%内外で,これの大部分は,種雄牛を介しての移入である.このような繁殖構造の変化が,集団の近交度に及ぼす影響を調べるため,1950年と1960年の血統登録雌牛群から標本抽出をおこなつて,全近交係数を計算し,またその内容を分析した.その結果,次のことがわかつた.繁殖集団全体としての血縁度が,この10年間に著しく増大し,これによる全近交度への寄与は,その80%以上を占めるに至つている.その反面,県内の分化は失われ,集団全体として,均質化に向かいつつある.親子交配や兄妹交配の頻度には,大きな変化はない.これらの寄与の合計としての全近交係数には,増加傾向が認められるが,著しいものではない.集団の平均血縁に起因する近交係数の増加は,毎代40%もの移入を受け入れている集団としては,考えられぬほど著しい.そこで,この移入が,集団の遺伝的変異を増大させる効果を,ほとんどもつていないのではないかと考えられた.わが国においては,種雄牛の供給地が,北海道その他の数地方に限られているため,移入個体同志,および移入個体と前から県内にいた個体とがかなり強度の血縁関係で結ばれていると考えられる.このような血縁関係が,移入の遺伝的効果を減殺していのであろう.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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