アコヤ貝稜中層の可溶性マトリックスタンパク質における炭酸脱水酵素活性
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概要
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継続後誌:近畿大学先端技術総合研究所紀要 = Memoirs of Institute of Advanced Technology, Kinki University貝殻は無脊椎動物における典型的な硬組織であり、方解石あるいはアラレ石構造の炭酸カルシウムの結晶からなる。アコヤ貝の硬組織についてみると、外側は稜中層と呼ばれ、方解石構造の炭酸カルシム結晶であり、また、真珠層と呼ばれる内側は同様に炭酸カルシムの結晶であるが、アラレ石構造である。これらの硬組織形成には以前から炭酸脱水酵素が関与することが指摘されてきたが、アコヤ貝稜中層よりEDTAで抽出した可溶性マトリックスタンパク質中にも真珠層と同様に炭酸脱水酵素の存在が確認された。この酵素は稜中層における方解石構造形成過程で働くものと思われ、真珠層のナクレインに対応するものと考えられる。また、一般的に、炭酸脱水酵素は硫化ナトリウムやスルファニルアミドで活性が阻害されるが、可溶性マトリックス中の酵素は硫化ナトリウムに抵抗性であることが解かった。 (英文) Mollusk shells are typical hard tissue in invertebrate, and composed of either calcite or aragonite, differ with polymorphs of CaCO_3. Shell of pearl oysters (Pinctada fucata) consists of both layers, one is outer prismatic layer which is bearing calcite, another is inner nacreous layer which is bearing aragonite. It is already suggested that carbonic anhydrases that catalyze the interconversion of CO_2 and H_2O (CO_ 2 + H_2O ⇔ HCO_3^- + H^+) are participate in the process of calcification. We have detected a carbonic anhydrase activity in the soluble matrix proteins from the prismatic layer in Pinctada fucata. A putative molecular weight is about 60KDa. It is assumed that this enzyme is responsible for the formation of prismatic layer and corresponds to nacrein in the nacreous layer. Sulfanilamide and sodium sulfate are generally inhibitors of carbonic anhydrases. However, these enzymes in the soluble matrix proteins are resistance to sodium sulfate.
- 近畿大学生物理工学研究所,キンキ ダイガク セイブツ リコウガク ケンキュウジョ,Kinki Daigaku seibutsurikogaku Kenkyushoの論文
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