知的障害特別支援学校中学部における地域社会・産業と連携した職業教育に関する研究
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概要
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近年、障害のある人たちへの就労支援施策の進展が著しい。2002年に示された「障害者基本計画」において、「雇用・就業は、障害者の自立・社会参加のための重要な柱であり、障害者が能力を最大限発揮し、働くことによって社会に貢献できるよう、その特性を踏まえた条件の整備を図る」とする方針が示され、施策の具体化が方向付けられた。2005年に成立した障害者自立支援法においても「就労移行支援」「就労継続支援」といった様々な形態での就労支援が重要な位置を占めている。2008年3月に告示された特別支援学校学習指導要領においても、「地域や産業界等と連携し、職業教育や進路指導の充実を図ること」とされている(文部科学省、2009)。 就労支援を特別支援教育で引き受ける場合の中核的な教育活動は職業教育である。職業教育に関して、名古屋らは、知的障害特別支援学校における職業教育に関する実践研究が、高等部段階のものに比べ中学部段階で低調であることを指摘している(名古屋、稲邊、田村、田淵、2008)。2008年1月に公にされた中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」においても職業教育に関する記述は高等部段階に関するものである(中央教育審議会、2008)。また、前述の特別支援学校学習指導要領においても職業教育にかかわる具体的改訂は高等部に関する事項である(文部科学省、2009)。 名古屋らは、特別支援教育における職業教育への関心が高等部段階を主とするものであることに対して、職業教育が義務教育最終段階である中学部においても重要であるとの認識に立ち、岩手大学教育学部附属特別支援学校(以下、「附属特別支援学校」)中学部における作業学習及び働く活動を中心とした生活単元学習の授業研究を通じて、知的障害特別支援学校における職業教育の在り方を検討した(名古屋、稲邊、田村、田淵、2008;名古屋、稲邊、田淵、大嶋、2009)。 その結果、名古屋らは、職業教育としてふさわしい作業活動として、現実度が高く、かつ生徒が主体的に取り組めることを重視して授業研究を行った。その結果、現実度の高い作業活動としては、学校が立地する、あるいは生徒が居住する地域での産業基盤との関係重視も十分に考慮されることが必要であることを指摘した。持続可能な材料の入手、作業ノウハウ、販路開拓などでの地域産業との連携の重要性が考えられた。地域産業との関係での材料入手については、附属特別支援学校が立地する地域でのリンゴ栽培で恒常的に生じる剪定材を再利用した製品開発が提案された。このことは環境への配慮としても有用であった(名古屋、稲邊、田村、田淵、2008)。作業学習(新設の中学部クラフト班の事例)では、地域産業との連携がスムーズな作業活動のスタートにつながることが明らかにされた。このような好条件は、より持続可能でかつ生徒主体、現実度の高い作業展開を指向できることが示唆された(名古屋、稲邊、田淵、大嶋、2009)。 さらに、職業教育が単なる作業能力の訓練ではないことを考えれば、地域産業との連携の過程での地域の方々との関わりの深まりは、社会の中で生きていくことの良さを生徒たちが自然に感じる貴重な機会であることも示された。産業という枠だけでなく、働く活動を通じて、地域の方々と共にある生活を深めていくことも、実践上の課題とされた(名古屋、稲邊、田淵、大嶋、2009)。これらの先行研究のキーワードともいえる「地域産業」を「地域社会」と拡大して検討することも今後の課題となり得る。 そこで本研究では、以上の名古屋らによる先行研究を踏まえ、附属特別支援学校中学部で実践されるれた作業学習(クラフト班)及び、働く活動を中心とした生活単元学習の授業研究を通して、生徒の主体的取り組みを実現し、かつ地域社会・産業に密着した持続可能な環境教育に資する職業教育の展開方法を明らかにすることを目的とする。
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