多発性嚢胞腎に合併した両側腎細胞癌の1例

概要

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56歳男。30年前に多発性嚢胞腎を指摘され, 4年前より血液透析導入となっていた。今回, 外尿道口からの血性分泌物が出現し, 腹部造影CTで左腎上極の嚢胞壁肥厚を認め, 内部構造が不均一であり, 悪性病変を否定できず, 腹腔鏡下左腎摘出術を施行した。摘出腎の上極側嚢胞壁内に硬い腫瘤を認め, 病理学的診断はRenal cell carcinoma, clear cell carcinomaとpapillary carcinomaの混合型で, pT1a pN0M0G1 INFαv(-)であった。追加治療なしで経過観察していたが, 術後14ヵ月に再度外尿道口からの出血を認めた。内視鏡で膀胱・尿道に異常はなく, 腹部造影CTで右腎に腫瘤性病変は認めなかったが, 患者の希望により腹腔鏡下右腎摘除術を施行した。摘出標本は大小多彩な嚢胞を形成し, 嚢胞内に出血があったが, 腫瘤性病変は認めなかった。病理診断はRenal cell carcinoma, clear cell carcinomaで, pT1a pN0M0G2 INFβv(-)であった。再手術後16ヵ月経過し, 再発はない。
泌尿器科紀要刊行会の論文