日本脳炎ウイルスに対する免疫酵素測定法(ELISA). : II.ヒト患者血清中の抗体価
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概要
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臨床的に日本脳炎(JE)と診断またはJEを疑われたヒト患者血清中のJEウイルスに対する抗体価を免疫酵素測定法(ELISA)の間接法により測定した.血球凝集抑制(HI)抗体価と全免疫グロブリン(T-Ig) ELISA抗体価との間には相関性が認められた.HIにより血清学的にJEと診断された対血清の多くは有意の抗体価上昇を伴う高い回復期T-Ig ELISA抗体価を示したが,HI陰性の材料は有意の抗体価上昇を示さず回復期のT-Ig ELISA抗体価も比較的低値であった.庶糖密度勾配遠心法により分画した患者血清のELISA結果から,ヒトIgGまたはIgMに特異的に結合するペルオキシダーゼ標識抗体を用いることによってIgGまたはIgM抗体価を別々にELISAにより測定できることが判明した.2メルカプトエタノール(2ME)処理によるHI抗体価の低下度とIgM ELISA抗体価との間には相関性が認められた.2ME感受性HI抗体価が有意に認められない場合にもIgM ELISA抗体が認められる材料が可成りの数存在した.高力価のIgG抗体が存在するとIgM ELISA抗体価の測定値が阻害された.リウマチ様因子が存在してもJEウイルスに対するIgM ELISAが疑陽性となる明らかな例は認められなかった.得られた結果の分析によりIgM ELISAはHIやT-Ig ELISAに比べより多くのJE陽性例を検出できることが判明した.これらの結果に基づいてELISAによるJE血清診断法を提案した.Indirect enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) was performed to measure antibody titers in sera from patients clinically diagnosed or suspected of Japanese encephalitis (JE). Correlation was observed between the hemagglutination-inhibition (HI) and the total immunoglobulin (T-Ig) ELISA titers against JE virus. Significant rise accompanied by high convalescent T-Ig titers was observed for many paired specimens serologically diagnosed as JE by the HI test, in contrast to those HI-negative specimens showing no significant rise with relatively low convalescent T-Ig ELISA titers. Sucrose gradient sedimentation analysis on some sera has indicated that the ELISA using specific anti-human IgG or IgM conjugated with peroxidase could measure the antibody titers in each class separately. Assay on the IgM antibody titers showed certain correlation between the decrease in the HI titers after 2-mercaptoethanol (2ME) treatment and the IgM ELISA titers. The IgM ELISA could detect IgM antibody in many specimens for which significant amount of 2ME-sensitive HI antibody was not observed. Presence of high levels of IgG antibody was found to interfere the IgM ELISA titers. However, presence of rheumatoid factor did not exert appreciable effects to give any false positive IgM antibody against JE virus. Analysis on the data indicated that IgM ELISA could detect the largest numbers of JE-positive cases compared with the HI or T-Ig ELISA. Based on these observations, a tentative procedure of serodiagnosis on JE by the ELISA was proposed.
- 長崎大学熱帯医学研究所,Institute of Tropical Medicine, Nagasaki Universityの論文
- 1981-09-30
著者
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